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ベストセラーへの道─その3 執筆、そして出版[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(202)]

No.4909 (2018年05月26日発行) P.64

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2018-05-23

最終更新日: 2018-05-22

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忙しいだろうに、よく本を書く時間がありますね、と言われるが、なかなか進むものではない。岩波新書『エピジェネティクス』を脱稿した2014年の4月頃から『こわいもの知らずの病理学講義』に再度取りかかり、初稿を仕上げたのが2017年の3月なので、3年ほどかかったことになる。

どんなエピソードをいれたらためになるか、おもしろがってもらえるか、などを考えながら書くのは楽しかった。ただ、ウソを書く訳にはいかないので、あたりまえのことながら、きちんと調べながら書いた。

恥ずかしながら、自分では確実に知っていると思い込んでいたのに勘違いしていたことが多いのには驚いた。アホですがな。しかし、おもろい本を何冊か出しておられる同僚教授と話していたら、「わたしもそうです」とのこと。そうか、意外とそういうものなんかもしれんと安心した。安心するような問題とはちゃうかもしれんけど。

装丁を有名ブックデザイナーの寄藤文平さんにお願いすると聞いた時は驚いたけれど、むちゃくちゃ嬉しかった。そして、ちょっと心配でもあった。というのは、寄藤さんの『デザインの仕事』(講談社)に、装丁するときは、内容を読み込んでから、と書いてあったので…。意外と弱気である。

できあがりは想像をはるかに上回る素晴らしさだった。ひときわ目をひく真っ黄色のカバーにかわいらしいイラスト。『こわいもの知らず…』が売れたのは装丁のおかげも相当にあるとにらんでいる。感謝!

発行が9月19日と決まり、そのすばらしい装丁の書影が8月30日にAmazonに出た。ツイッターで告知し、誰か予約してくれはったらうれしいなぁと思って眺めていたら、信じられないことがおきた。

『其の168 新刊出来!』でも書いたが、なんと8位にまで上昇!どうしてこんなことがおこったのか、いまだにわからない。ひょっとしてわたしはむっちゃ人気者なのか?これはすごい追い風になり、初版3500部の予定が、急遽5000部に。

版元にしても、どれくらい売れるかわからないのでこわごわだったのが、発売1週後には、早くも3000部の増刷が決定。ウソみたいだけど、その1週後には3刷4000部が決まって、当初目標であった1万部を早くも突破。かくして、夢のベストセラー街道を走り始めたのでありました。

なかののつぶやき
「本が売れたらもちろんうれしい。でも、けっこう弱気なんで、売れれば売れるほど、なんか間違えたことを書いてないやろうか、どっかからクレームが来ないやろうか、と心配がふくらんでいきます。幸い大きなミスはなかったものの、何箇所かはちょっとした間違いがあって、増刷時に訂正しておりまする。ホンマ、世に校正の種は尽きまじ、ですわ」

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