在宅患者に脱水が疑われるとき,どんな対応をしていけばよいのでしょうか?
高齢者は,様々な要因から脱水を引き起こしやすい。脱水はどの時期でも起こりうるが,特に夏場には熱中症が起こりやすい。高齢者では日常生活の中で起こる非労作性熱中症が多い。非労作性熱中症は日常生活の中で徐々に進行するため,周囲の人に気づかれにくく,対応が遅れる危険性があり,重症例も多い1)。在宅で脱水に対応するためには,こまめに観察を行うことと,脱水を引き起こす原因を明らかにすることが重要である。
脱水が疑われるときは,その原因を考えることが重要である。脱水の背景には水分・食事摂取量低下,熱中症等の環境的要因,感染症,嘔吐や下痢,利尿薬内服等が挙げられる。身体的な評価に加え,水分・食事の摂取状況,療養環境の様子,内服状況等を確認する必要がある。症状は非特異的で,倦怠感,脱力,口渇,体位性めまい等を呈する。より重篤な症状としては,乏尿,意識障害等がある。
診察においては,皮膚ツルゴール(turgor)の低下,口腔内乾燥,頸静脈圧低下,起立性頻拍(起立による15~20/分以上の脈拍上昇),起立性低血圧(起立による10~20mmHg以上の血圧低下)が参考になる。さらに重度の体液喪失により,低血圧,頻拍,循環血液量減少性ショックなどが起こる2)。
診察で大部分は診断可能であるが,血液検査や,ポケットエコーで下大静脈の虚脱を評価することも参考になる3)。脱水が高度だと考えられるときは,必ず腎機能や電解質を評価する。また,脱水の原因として感染症が疑われるときは,感染源について検索していく必要がある。
経口摂取が可能であれば,経口補水液などを摂取する。スポーツドリンクでもよいが,表 1)に示すように,経口補水液と比較すると,塩分量が少なく,糖分が多いことを認識しておく必要がある。経管栄養があれば,水分注入量を増やしてもよい。
経口摂取が困難な場合もしくは脱水の程度が高度のときは,在宅で点滴を行うという選択肢もある。末梢血管確保が困難な場合は皮下点滴でもよい。詳しくは輸液の項(→「Q94」)に譲る。輸液による電解質異常や心不全にも注意が必要である。大量に輸液が必要なときや,電解質異常を伴うときは,入院が望ましい。
経口摂取が困難となって脱水を起こした場合は,その原因を検索するとともに,人工的水分・栄養補給法について検討していくことが望ましい。
在宅で治療するか入院するかは,患者の置かれた状況により異なる。高度の脱水でも,できるだけ在宅での治療を希望する患者には,訪問看護師と協力し連日の輸液を行うこともあれば,軽度の脱水でも一時的に入院させ,介護者の負担を軽減させることもある。患者や周囲の状況に対する総合的な判断が求められる。
【文献】
1) 日本救急医学会:熱中症診療ガイドライン 2015.
[http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/heatstroke2015.pdf]
2) 福井次矢, 他, 監修:ハリソン内科学. 第4版. メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2013, p288-91.
3) 小林 只:ポケットエコー自由自在 ホントに役立つ使い方. 中外医学社, 2013, p12-8.