□バイタルサインのABC項目の1つであり,生命危機に係る非常に危険な病態なので,原因検索と同時並行して蘇生行為を開始する必要がある。最終的には血圧低下をきたすが,脈圧の縮小と頻脈などの前状態を早期に把握して対処を開始することが肝要である。
□緊急対処が求められるが,病態の判別は緊急対処に欠かせない(表)1)2)。
□ショック特有の症状に加え,呼吸困難,意識障害,精神症状など多彩な徴候を示す。
□発熱や感染徴候は感染性ショックを疑う。
□食事や薬剤摂取,ハチ刺症など,抗原曝露の直後から呼吸困難や高度の浮腫・紅潮などを認めればアナフィラキシーショックを疑う。
□外傷後のショックは90%が循環血液量減少性だが,頸髄損傷例(頸部の自発痛・圧痛)では神経原性ショックを疑う。胸部外傷では緊張性気胸と心タンポナーデを疑う。
□体外への出血は循環血液量減少性を疑えるが,胸腔・腹腔内出血,軟部組織内出血や消化管出血など体外への出血がない場合には初期に気づかれないことがある。タール便の有無は聴取する必要がある。
□心筋梗塞など胸痛を伴えば心原性ショックを疑えるが,若年者の感冒などで心筋炎を生じた際にはポンプ失調を生じるので若年者のかぜ症状にも注意する。
□頻呼吸:ショック患者の場合,臓器への血流不足・代謝性アシドーシスを代償しようとする。
□血圧低下・頻脈:ショック時には,循環を代償しようと多くの場合は頻脈になる。収縮期血圧90mmHg以下を基準にすることが多いが,平時の血圧よりも低下している場合も含まれる。
□血圧低下・徐脈:徐脈が原因で心拍出量が減少してショックになる場合がある。
□初期には血圧低下なく頻脈がある:頻脈で代償している段階である。
□意識障害:ショックによる脳循環不全に伴う症状である。
□体温:感染性ショックでは38℃以上の発熱がみられる一方で,36℃以下の低体温になることがある。
□病態共通の身体所見:顔面蒼白,冷汗,苦悶用顔貌,脈拍触知不良・不能・四肢冷感(感染性ショックを除く),呼吸促迫,皮膚に紫色の大理石様模様,爪の毛細血管再充満時間(capillary refilling time:CRT)遅延(爪を5秒以上圧迫後,解除してピンク色に回復まで2秒以上かかる),乏尿,意識障害などが挙げられる。
□病態ごとの特徴的身体所見:四肢が温かいショックでは感染性ショック,外傷後の頸静脈怒張および患側胸壁膨隆,運動減弱,呼吸音減弱は緊張性気胸,外傷後の徐脈は神経原性ショック,心臓超音波にて心嚢液貯留は心タンポナーデ,全身の紅潮,浮腫,上気道閉塞所見はアナフィラキシーショックをそれぞれ疑う。
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより