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顔面・頸部外傷[私の治療]

No.5261 (2025年02月22日発行) P.40

早川航一 (長崎みなとメディカルセンター救命救急センター長)

登録日: 2025-02-19

最終更新日: 2025-02-18

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  • 顔面,頸部いずれの場合であってもまずは気道緊急や,大量出血によってショックに陥る危険性があることに留意して治療にあたる。
    機能障害や整容面などの後遺症を残す可能性があるため,各領域の専門医へ機を逸することなく応援を要請する。

    ▶病歴聴取のポイント

    • 潜在しうる損傷をイメージするためには,受傷機転の詳細な把握がきわめて重要である。
    • 病院到着前に呼吸様式や嗄声の有無等の聴取は必ず行い,ビデオ喉頭鏡や気管支鏡,輪状甲状靱帯切開の準備など気道緊急に最大限備える。
    • 特に頸部鋭的損傷の場合,現場での出血の程度や動脈性出血の有無,創部からの空気の漏出の有無は,創の深達度や損傷血管を推測する上で重要である。
    • 内頸静脈損傷による空気塞栓は致命的となるため,搬送途上にむやみに坐位をとらすことは避け(できればTrendelenburg体位),濡れたガーゼでの圧迫を救急救命士へ指示する。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    脈拍や血圧といった測定値に固執せず,四肢冷感・湿潤,橈骨動脈の触れ方でショックを認知するよう努める。

    【身体診察】

    • 嗄声や口腔内出血,皮下気腫の有無,呼吸様式,SpO2測定により気道・呼吸の評価を行う。
    • 鼻腔や外耳道からの出血の有無・程度を評価する。
    • 頸部鋭的損傷の場合,気管や頸動静脈の損傷の可能性を常に念頭に置き,創が広頸筋より深部まで達しているか,hard sign(活動性出血,拍動性の血腫,創部からのバブル,thrillの触知)を認めた場合には,気道確保の上で詳細な探索(neck exploration)を行う。
    • 顔面外傷では脳神経が損傷している可能性がある。視力,対光反射,眼球運動,眼瞼開閉運動はもちろんのこと,三叉神経の損傷も念頭に顔面の知覚も評価する。
    • 内眼角や咬筋に創が存在する場合には,涙小管ならびに耳下腺管損傷の有無を評価する必要がある。

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