□脳梗塞急性期:収縮期血圧>220mmHgまたは拡張期血圧>120mmHgの高血圧が持続する場合や,大動脈解離,急性心筋梗塞,心不全,腎不全などを合併している場合に限り,慎重な降圧療法を考慮する。血栓溶解療法を予定する患者では,収縮期血圧180mmHg以上または拡張期血圧110 mmHg以上の場合に,静脈投与による降圧療法を行う3)。
□脳出血超急性期:できるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満に降圧させる3)。
□くも膜下出血:収縮期血圧140mmHg未満を目標に降圧療法を開始する。
□脳底動脈閉塞症,椎骨動脈解離等による延髄梗塞,脳幹部出血,くも膜下出血例では突然呼吸停止することもあり,放射線科へ移動中や画像撮影中にも呼吸状態の変化に十分に留意し,適宜あらかじめ気管挿管する。
□呼吸筋麻痺を起こしうる疾患,GBS,重症筋無力症クリーゼ,諸種中毒性神経疾患,重症脳幹脳炎等では肺胞低換気に注意し,意識障害やPaCO2上昇などの肺胞低換気の所見がみられる場合には,適宜気管挿管を行う。
□簡易血糖測定:バイタルサイン測定と同時に行う。
□血清中のNa,K,血糖,尿素窒素,クレアチニン,Ca,Mg,無機P,肝機能などの生化学,末梢血,凝固系を評価する。
□代謝性(ビタミンB1),中毒・薬物性(ベンゾジアゼピン系,バルビツール酸系,三環系抗うつ薬などは薬物スクリーニングとしてトライエージ®により評価,その他にアセトアミノフェン,テオフィリン,抗てんかん薬など),自己免疫性(抗核抗体関連,p-ANCA,c-ANCA,ACE,抗糖脂質抗体,抗AQP4抗体),感染性(各種ウイルス抗体),二次性ミオパチー(TSH,FT3,FT4,ACTH,コルチゾールなど)など,必要に応じて行う。
□その他,血液ガス検査を適宜行う。検体は保存する。
□髄膜炎,脳炎,脊髄,末梢神経障害,神経筋接合部の病巣が疑われる場合に施行する。適宜,検体保存する。
□脊髄,末梢神経障害,神経筋接合部,筋の病巣,特にGBSが疑われる場合には,速やかに施行する。
□頭部CT:まず脳内出血,くも膜下出血,時間の経過した脳梗塞の脳卒中病型診断ができること,硬膜下血腫などの脳卒中mimicsの鑑別診断が可能である。
□頭部MRI:特に拡散強調像(diffusion weighted image:DWI)は,虚血性脳血管障害の診断において感度88~100%,特異度95~100%である。DWI高信号域,ADC(apparent diffusion coefficient)低信号域では虚血性脳卒中の診断率は向上する4)。
□脊髄MRI:脊髄梗塞,脊髄硬膜外血腫,脊髄動静脈奇形などの脊椎血管障害と,脊髄損傷,脊髄炎や脊髄腫瘍などの脊髄非血管障害が疑われる場合に撮像する。
□脳卒中以外に運動麻痺を呈する疾患群,脳卒中mimicsの原因には,てんかん発作,低血糖症や肝性脳症などの代謝性疾患,片頭痛,全身疾患(敗血症),精神疾患(解離性障害)など多くの病態があり5),急性大動脈解離,急性心筋梗塞等の疾患も存在する。
□C7神経根障害例では左側の大胸筋に疼痛がみられる場合があり,狭心症と類似しているのでcervical anginaと呼ばれる。
□大動脈解離,脳動脈解離による脳梗塞にはrt-PA静注療法は禁忌である。
□脳梗塞超急性期の場合にはrt-PA静注療法適応を判断する。
□脳血管障害や脊髄疾患には緊急手術が絶対適応の疾患が多く,脳神経外科や整形外科との連携が必要である。
□GBS,フィッシャー症候群,ビッカースタッフ型脳幹脳炎では,早急に免疫グロブリン大量静注療法あるいは血漿交換療法を施行しなければならない。
1) 永山正雄, 他, 編:神経救急・集中治療ハンドブック. 医学書院, 2006.
2) Hand PJ, et al:Stroke. 2006;37(3):769-75.
3) 日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会, 他, 編:脳卒中診療ガイドライン2015. 協和企画, 2015.
4) Brunser AM, et al:Stroke. 2013;44(4):1169-71.
5) 永山正雄:救急医学. 2012;36(8);895-900.
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