□中毒は,疑わなければ見逃しやすい疾患の1つである。
□意識障害など,原因不明の症状では中毒を必ず鑑別に挙げる。
□薬物の種類にかかわらず,治療の原則は同じである。すなわち,対症療法として気道,呼吸,循環動態の評価と安定化のほか,吸収障害,排泄促進,解毒・拮抗薬投与を行う。
□患者が意図的に摂取した場合を除いて,患者自身が中毒物質を把握していることは少ない。また,意図的に内服した場合でも摂取したことを隠していることがある。そのため,中毒を疑った病歴聴取,情報収集が必須である。本人に処方されている医薬品だけでなく,周囲の環境にある医薬品すべてが中毒物質となる可能性がある。
□一時的な過量摂取による急性中毒と,慢性的な摂取による慢性中毒がある。
□摂取された薬物の半減期が参考になる。ただし,半減期は物質によって異なる。
□バイタルサインの異常,自律神経症状や中枢神経症状などの神経学的所見が重要である。
□トキシドローム:交感神経系を刺激する薬物,または副交感神経系を抑制する薬物は,頻呼吸,頻脈,高血圧などを引き起こす。一方,交感神経系を抑制する薬物,または副交感神経系を刺激する薬物は徐脈,低血圧,房室ブロックなどを引き起こす。三環系抗うつ薬や抗不整脈薬は心室性不整脈を引き起こす可能性がある。睡眠薬や麻薬は呼吸中枢を抑制し,徐呼吸や無呼吸を引き起こす。このような症状や徴候から中毒物質を推定することができる。注目すべき点を表にまとめた。
□意識障害:薬物作用として脳に直接作用して意識障害をきたす一次的な意識障害と,低血糖,低血圧,低酸素などによる二次的な意識障害がある。
□三大合併症である,①誤嚥性肺炎,②挫滅症候群,③低体温,に注意する。
□物質を推定する手がかりとして,特異的な臭いが挙げられる。ヒ素,有機リンはニンニク臭,アセトン,エタノール,イソプロピルアルコールはアセトン臭,青酸化合物ではアーモンド臭,硫化水素では腐った卵臭などが特徴的である。
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