□心室中隔欠損症(ventricular septal defect:VSD)は,左右心室間を隔てる壁に欠損孔を有する先天心奇形で,先天性心疾患の中で最も頻度が高い。欠損孔の左右短絡により肺血流増加と左心系容量負荷を認める非チアノーゼ性疾患である。
□解剖学的に心室中隔は流入部,膜様部,筋性部,流出路(漏斗部),の4つにわけられる。VSDは外科的修復の観点から漏斗部欠損,筋性部欠損,膜様部欠損,の3つに分類される(図)。
□重症度や自然歴は,欠損孔の位置や大きさにより異なる。中等度以上のVSD症例は乳幼児期に外科的修復が行われる。成人期は小欠損孔症例,手術後症例,閉鎖術が禁忌の高度肺高血圧,右左短絡(アイゼンメンゲル症候群)が存在する。
□小欠損(2~3mm)の場合,通常は無症状である。前胸部の欠損孔領域に汎収縮期雑音が聴取される。自然閉鎖もしばしば認められる。
□中等度欠損では,欠損孔の左右短絡血流が増加し,肺体血流比が2倍以上となる。拡張期ランブルやⅡ音の亢進が聴取される。
□大きな欠損(1cm以上)を有する症例は,乳児期早期に心不全が出現する。呼吸障害,哺乳不良,気道感染などが認められる。未治療では10代で約半数がアイゼンメンゲル症候群となる。
□自然閉鎖,小欠損孔,外科修復術後の症例は無症状である。欠損孔の位置に一致して汎収縮期雑音を聴取する。拡張期ランブルの聴取は左右短絡の増加を疑う。
□アイゼンメンゲル症候群では,低酸素血症が進行し,運動耐容能の低下,右心不全,多血症・腎機能障害などの全身臓器障害が認められる。
□左右短絡血流量に応じて心拡大,肺血管陰影の増強が認められる。
□アイゼンメンゲル症候群では,主肺動脈が著明に拡大する。
□左心容量負荷により左房・左室肥大を認める。肺高血圧合併例では両室肥大となる。
□欠損孔の部位およびサイズを診断する。有意な左右短絡では左房・左室が拡大する。
□肺高血圧合併例では短絡血流の速度低下,三尖弁逆流速度の増加を認める。
□外科治療の適応を決定するために,短絡量や肺血管抵抗が求められる。肺高血圧合併例では,一酸化窒素や酸素吸入による急性肺血管拡張試験が行われる。
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