循環器編④ 日本プライマリ・ケア連合学会監修
本連載では,日本プライマリ・ケア連合学会/全日本病院協会が実施している「総合医育成プログラム」の中から,選りすぐりのクリニカルパールを紹介します。現場のニーズを熟知しているエキスパートが,プライマリ・ケア医にとって「まさにそこが知りたかった!」というポイントをわかりやすく解説します。
プライマリ・ケアにおいて,動悸を訴える患者は多い。症状の鑑別のため,OPQRST〔O(onset,発症様式),P(palliative/provocative,増悪・寛解因子),Q(quality/quantity,症状の性質・強さ),R(region/radiation,場所・放散の有無),S(associated symptom,随伴症状),T(time course,時間経過)〕に沿った症状聴取を勧める向きもあるが,動悸の原因には次の5つ程度の病態しかないことから,その中のどれに当てはまるかを聴取したほうが,より早く診断にたどりつける。以下に診断名と症状の特徴を記す。
①期外収縮:ときどき胸がドクッとなる,脈が抜ける,胸が躍る,など。咳が誘発されることもある。
②発作性頻拍症:急に,突然,脈がものすごく早くなる。停止も突然であるが,症状としては必ずしも急ではなく,徐々に収まると感じることも多い。頻脈時には心負荷から心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP),脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が分泌され頻尿となる。停止後に大変喉が乾く,ということもある。
③発作性心房細動:②に類似するが,頻脈の程度が軽い場合は,脈の不規則さが持続することに起因する胸部不快感が前面に出る。脈が乱れるような,胸が躍るような感じが持続的に生じる。
④脈を大きく感じている:普段は気にしていなかった心拍動を安静時などに感じとり,「いつもと違う」と心配になり,さらに不安によって脈が早くなることで,ますます不安になる。長く続く。症状の出はじめと終息の時間的境目が,患者本人にも明確でなく,「気がつくとそうなっている」「仕事中は気にならない」などの特徴がある。
⑤安静,労作時に脈が早い:甲状腺中毒症,心不全,肺血栓塞栓症,貧血などに付随する症状である。疲れやすい,動いたときのドキドキが強い,など。