□正常肝ないし肝予備能が正常と考えられる肝に肝障害が生じ,初発症状出現から8週以内に,高度の肝機能障害に基づいてプロトロンビン時間のINR値が1.5以上を示すものを急性肝不全(acute liver failure)と診断する。
□肝性脳症が認められない,ないしは昏睡度Ⅰ度までの非昏睡型と,昏睡Ⅱ度以上の昏睡型に分類される。
□昏睡型は,初発症状出現から昏睡Ⅱ度以上の肝性脳症が出現するまでの期間が10日以内の急性型と,11日以降56日以内の亜急性型に分類される。急性肝不全昏睡型のうち,成因がウイルス感染,自己免疫性肝炎,薬物アレルギーなどの肝炎症例は,劇症肝炎(fulminant hepatitis)と診断することも認められている。
□INR値1.5以上で,初発症状出現から8週以降24週以内に昏睡Ⅱ度以上の脳症を発現する症例は遅発性肝不全と診断し,急性肝不全の類縁疾患として扱われる。
□劇症肝炎は年間発生数が400例程度の希少疾患であり,急性肝不全は非昏睡型も含めて年間1000例程度発生していると推定される。全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)の病態を呈し,多臓器不全(multiple organ failure:MOF)を併発する場合もある。特に昏睡型は予後が不良であり,人工肝補助も含めた集学的内科治療と肝移植を実施するために,かかりつけ医と肝臓病専門医,移植外科医の連携が必須である。
□肝性脳症が主たる症状である。
□昏睡度分類は犬山分類(1972年)に基づいて5段階に分類する(表1)。肝性脳症では,昏睡のみならず失見当識と精神症状が認められ,急性肝不全では昏睡Ⅲ度以上で脳浮腫が生じる場合がある。
□凝固異常,播種性血管内凝固(DIC)による消化管出血などの出血症状,感染症,腎不全,心不全など合併症,多臓器不全に起因する症状もみられる場合がある。
□プロトロンビン時間はINRが1.5以上であり,昏睡型,特に劇症肝炎では40%以下(一般にINRが2.0以上に相当)を示す。
□急性肝障害を反映してAST,ALT値が高値となるが,絶対値よりもその推移を半減期との関連で評価し,肝壊死の持続を判定することが重要である。肝不全の程度はプロトロンビン時間とともに,総ビリルビン濃度,直接/総ビリルビン比などを指標に判定し,DICの有無は血小板数を参考にする。
□腹部超音波,CT検査で肝萎縮の有無と肝容積の経時的変化を評価することも重要である。
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