□上顎洞癌は副鼻腔の1つである上顎洞にできる悪性腫瘍で,組織型としては扁平上皮癌が80%以上を占める。リンパ節転移,遠隔転移は比較的少ない。副鼻腔炎が危険因子とされる。
□癌が上顎洞内に限局している状態では自覚症状がないことが多く,副鼻腔炎と同様の症状(鼻閉,鼻漏)を呈することが多い。しかし,副鼻腔炎,花粉症などのアレルギー性鼻炎は両側性のことが多く,片側だけに症状がある場合や,鼻出血,血性鼻漏を繰り返す場合には上顎洞癌などの悪性腫瘍を鑑別することが必要である。
□上顎洞の骨壁を破壊し周囲組織に進展すると,眼症状(流涙,眼球突出,眼球偏位,複視など),頰部腫脹,硬口蓋・歯肉の腫脹,上顎の疼痛や知覚鈍麻,頭痛,開口障害などの症状が出現する(図)。
□診断は生検によって確定する。ただし,副鼻腔に発生する悪性腫瘍は,扁平上皮癌以外にも悪性リンパ腫,悪性黒色腫,嗅神経芽細胞腫,悪性ではないが内反性乳頭腫など多彩で,病理診断に苦慮する場合もある。そのため,CT,MRIなどの画像診断を行い,確実に腫瘍から十分な量の組織を採取することが重要である。全身麻酔下での生検,あるいは上顎洞の試験開洞が必要となる場合もある。試験開洞を行う場合は腫瘍を播種する可能性があり,検査の段階から治療戦略を考えながら行う。
□画像診断は,CT,MRIが基本であるが,CTは骨破壊の有無の診断に優れ,MRIは軟部組織の陰影を診断するのに優れる。単純CTのみでは軟部組織の陰影の評価はほとんどできないが,造影剤を用いると血流が豊富な組織が濃く(白く)描出され,画像のコントラストが明瞭になり,より詳細な観察が可能となる。
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