□頸部の筋膜と筋膜の間(間隙)に膿瘍を形成した病態である。
□早期に診断し適切な治療を行わないと,急激な経過をたどり致死的になることがある。
□発症の原因としては,歯性(齲歯,抜歯),扁桃炎,唾液腺炎(耳下腺炎,顎下腺炎),外傷,異物等がある。
□発熱や咽頭痛といった一般的炎症所見に加えて,頸部の腫脹,皮膚の発赤,頸部の疼痛,圧痛を認める。
□発症の原因となる疾患の症状(歯性,扁桃炎,唾液腺炎など)が先行していることが多い。ただし,原因となる疾患が明らかでない場合もある。
□炎症や膿瘍の影響で喉頭の腫脹をきたし,呼吸困難となることがある。
□耳鼻咽喉科領域の一般的な炎症疾患と比較して重篤感がある。
□視触診:口腔,咽頭所見をしっかりとる。原因となる歯性感染,扁桃炎,唾液腺炎等がないか観察する。これらの所見がないときは,異物の有無も考えておく。頸部の視触診で,腫脹,皮膚の発赤,局所の疼痛,圧痛を認める。
□ファイバースコープ:喉頭をファイバースコープで観察することは必須である。喉頭の浮腫,腫脹を認めることも多い。
□頸部造影CT:必須の検査である。一般に膿瘍腔は低吸収,膿瘍壁に造影効果を認める。どの間隙に膿瘍があるかをみるとともに,膿瘍の広がりを診断する。縦隔に進展している場合は撮影を胸部まで広げる。
□MRI:T1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号に描出される。
□血液検査:白血球(好中球)増加とCRPの著明上昇を認める。これらは治療効果の判定にも有用であり,経時的に測定する。
□分離菌は好気性菌ではストレプトコッカス属が最も多く,嫌気性菌ではペプトストレプトコッカス属,プレボテラ属が多くみられる。複数の菌が同定されることも多い1)。
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