□ヒトアデノウイルスはエンベロープを持たない二本鎖DNAウイルスで,現在までに1~67型が知られている。
□アデノウイルスの型により臓器特異性が異なるため,咽頭結膜熱(pharyngoconjunctival fever),肺炎,流行性角結膜炎,急性胃腸炎,出血性膀胱炎,腎炎,髄膜脳炎,心筋炎など全身臓器に多彩な症状を呈するが,ここでは日常で遭遇することの多い咽頭結膜熱(プール熱)について概説する。
□咽頭結膜熱の原因としてアデノウイルス1~8,11,14,16,19,37型の感染が報告されているが,特に3型,7型によるものが多い。
□咽頭結膜熱は小児科定点により報告される5類感染症であり,通常は夏期に地域的流行を認めるが,小規模な流行は通年性にみられる。
□アデノウイルスの潜伏期間は2~14日間であり,多くは5歳までに初感染を経験する。
□発熱,咽頭炎,結膜炎を特徴とするが,それ以外にも頭痛,嘔吐,鼻汁,咳嗽,腹痛,倦怠感,頸部リンパ節腫脹などの多彩な症状を呈する。
□発熱は39~40℃と高熱になることもある。多くは3~5日間で解熱が得られるが,10日間以上続くこともある。
□咽頭炎では,咽頭発赤,扁桃腫大に加えて,白苔を認めることがある。
□結膜炎では,結膜充血,眼脂,羞明,眼そう痒感を呈する。
□咽頭結膜熱の診断は,アデノウイルス抗原を免疫クロマトグラフィー法で検出迅速診断キットによって行われることが多い。
□迅速診断キットは,咽頭や眼脂の拭い液を検体として用い,PCR(polymerase chain reaction)をgold standardとしたときの感度は70~80%で,特異度は95~100%と特異度の高い検査である。
□また,その感度は検体の質にも依存する。小児では泣いたり暴れたりして咽頭拭い検体の採取が困難な状況になることがあるが,局所の不十分な擦過は偽陰性につながるため,注意が必要である。
□また,迅速診断キットに含まれていないアデノウイルス型は検出することができないため,その感度は十分ではなく,迅速診断キットが陰性でも咽頭結膜熱は否定できない。
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