胆道閉鎖症は,乳児期早期に肝外胆管が閉塞し,外科的治療が行われなければ,胆汁性肝硬変が進行する疾患である。原因について様々な研究が報告されているが,一定の見解は得られていない。発生頻度は約1万出生に1人で,わが国の全国登録集計では年間100例弱の登録がある1)。病期と手術日齢により生存率に差を認め1),できるだけ早期の手術が求められる。
主な症状は,遷延性黄疸,便色異常,褐色尿,肝腫大である。黄疸については,新生児黄疸消退の時期と重なるため,判断に時間を要することもある。便色異常については,母子健康手帳に挾み込まれている便カラーカードで実際の便と比較することで早期発見につながっている。
診断は,腹部超音波検査で胆囊萎縮と肝門部高輝度エコー所見(triangular cord sign)を認める。さらに血清胆汁酸,肝胆道シンチグラフィ,腹部CT,十二指腸液検査(チューブ留置による十二指腸液中の胆汁確認)が行われる。それでも胆道閉鎖症が否定できない場合に手術となり,まず確定診断のための直接胆道造影が行われる。アラジール症候群や胆管減少症などで手術を選択することがないように注意する必要がある。
術中胆道造影により胆道閉鎖症の診断がついた場合,続いて肝門部空腸吻合(葛西手術)を行う。肝門部操作では獲得できる胆汁排泄をこの手術により失うことのないように愛護的に行い,胆道再建では胆管炎を予防する目的でRoux-Y脚を長めにとり,spur valveによる逆流防止手術を取り入れている。術後には,胆管炎の予防として抗菌薬を長期に投与する。また胆汁分泌を促進するために,肝細胞と胆管の炎症を抑制するステロイドと,利胆作用を有するUDCA(ウルソⓇ)を使用する。
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