□急性白血病は,血液の悪性腫瘍である。原因は不明であるが,造血細胞に生じた染色体異常や遺伝子変異の結果,幼若造血細胞(芽球)が自律的かつ無秩序に増殖することで発症する。
□ダウン症候群など,ある種の先天性疾患では白血病の発症頻度が高い。また,別の悪性腫瘍に対する化学療法や放射線治療後に発症することもある。
□急性白血病のうち,芽球形質がリンパ系造血細胞へ分化傾向を示すものを急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL),骨髄系造血細胞へ分化傾向を示すものを急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)と言う。白血病は小児期の悪性腫瘍の約3分の1を占める最大の疾患で,ALLが約70%,AMLが約20%を占める。
□正常造血の障害:貧血(顔色不良,易疲労感),血小板減少(出血症状),正常白血球数の減少(感染症)が生じる。骨髄内で急激に芽球が増殖することによって骨痛や関節痛が生じることもある。
□髄外浸潤:リンパ節腫脹,肝脾腫,中枢神経系(CNS)や精巣への浸潤,皮膚浸潤などがみられる。
□緊急を要する病態(oncologic emergency):上大静脈症候群/上縦隔症候群(T細胞性ALLなどで胸腺浸潤を伴う場合),播種性血管内凝固症候群〔特に急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)〕,白血球増多症(末梢血白血球数が10万/μLを超える場合など)における腫瘍崩壊症候群(白血病細胞内容物の遊出による高尿酸血症,腎障害,高カリウム血症,高リン血症など)や過粘度症候群に伴う頭蓋内出血などは,緊急を要する。
□形態診断:穿刺吸引した骨髄液の塗抹標本において,有核細胞中に芽球が一定割合以上(ALLは25%以上,AMLは20%以上)占めることを証明して,確定診断を行う。なお,骨髄液が吸引困難であった場合は,骨髄組織を直接採取する骨髄生検を実施することが望ましい。
□免疫診断:細胞系列に特異的な細胞表面抗原あるいは細胞質内抗原を,フローサイトメトリーで検出する。B前駆細胞性とT細胞性ALLとの区別,治療上はリンパ腫に分類される成熟B細胞性ALLの診断,AMLの各病型診断などに欠かせないツールである。
□染色体・遺伝子診断:白血病細胞の特定の染色体・遺伝子異常は予後と密接に関係し,再発リスクに応じた層別化治療に欠かせない情報である。また,フィラデルフィア(Ph)染色体として知られるt(9;22)(q34;q11)/BCR-ABL1が陽性だった場合は,チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)を用いた分子標的治療の適応となるなど,治療選択においても重要である。
□特にALLでは,診断時のCNS浸潤の有無は予後と強く相関し,CNS浸潤陽性例に対しては治療強化が必要になる。その他の部位の髄外浸潤については臨床的意義が明らかでないことから,画像検査や生検は必須ではない。
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