□甲状腺ホルモンは,胎児期,生後早期の神経発達に必須のホルモンで,その不足は不可逆的神経障害をきたしうる。近年,新生児マス・スクリーニング(MS)によって先天性甲状腺機能低下症(congenital hypothyroidism)の早期発見・治療が行われるようになり,知能発達を含む神経学的予後は大きく改善している。
□本症の80~90%が甲状腺形成異常(異所性約60%,欠損約20%,低形成<5%など),10~20%がホルモン合成障害による1)。
□軽症あるいは一過性と思われる症例を含むMS(TSH高値)による本症の発見頻度は1/2000~4000と上昇しており1),MS陽性者に対する的確な診断・治療は小児内分泌専門医のもとで行われることが望ましい。
□中枢性(続発性)甲状腺機能低下症や,末梢での甲状腺ホルモン作用不全による甲状腺機能低下症もあるが,ここでは原発性の本症を対象とする。
□重症では新生児期から,①遷延性黄疸,②便秘,③臍ヘルニア,④体重増加不良,⑤皮膚乾燥,⑥不活発,⑦巨舌,⑧嗄声,⑨四肢冷感,⑩浮腫,⑪小泉門開大,⑫甲状腺腫,等を認めることもある。しかし,これらの症状は非特異的であり臨床症状から本症を早期発見することは困難で,MS開始以前には多くの症例で診断が遅れ,知能発達遅滞を呈していた2)。
□現在はほとんどがMS陽性を契機として早期診断されるため,精査時に上記の諸症状を認めることは少ない。一方,MSでは発見できないすり抜け症例や甲状腺刺激ホルモン(TSH)が遅発性に上昇する症例も存在し,乳幼児の成長発達障害では本症も鑑別診断に考慮する必要がある1)。
□精査対象では血清TSH,FT4測定は必須で,目安としてFT4値が<0.4 ng/dLを最重症,0.4~0.7 ng/dLを重症,0.7~1.5ng/dLを中等症とするが,担当医の経験に基づく判断が優先される2)。
□上記の症状12項目中2項目以上陽性,大腿骨遠位端骨核未出現,甲状腺超音波検査で甲状腺が同定できないまたは甲状腺種を認めた場合は重症と判断する2)。
□近年,一過性を含む本症において遺伝子異常が多く報告されているが,まだ研究レベルで限られた施設でのみ可能な検査である2)。
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