著: | 山本 剛(神戸市立医療センター中央市民病院) |
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判型: | A5判 |
頁数: | 162頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2019年01月23日 |
ISBN: | 978-4-7849-4810-9 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
第1章 グラム染色による病態把握
【喀痰グラム染色の見方】
喀痰グラム染色で病態を把握する
肺炎の分類と喀痰グラム染色
肺膿瘍の成因と喀痰グラム染色
肺炎と肺膿瘍をグラム染色で区別できるか?
急性肺炎のスメアで見えるもの
グラム染色は複数菌が同時にわかるメリットがある
肺炎球菌って必ず見えるの?
貪食像=原因菌か?
フィブリンか粘液か?
ピュアじゃない検体に出会ったら
複数菌感染なのか?
【市中肺炎】
市中肺炎の起炎菌を推定する
生えない敵と戦う
注射薬か経口薬かー感受性成績の解釈について
インフルエンザ罹患後の細菌性肺炎
【院内肺炎】
院内肺炎の見方は難しいか?
人工呼吸器関連肺炎 その①VAPに遭遇しても困らない
人工呼吸器関連肺炎 その②Stenotrophomonas maltophilia
人工呼吸器関連肺炎 その③ブドウ球菌の貪食像
人工呼吸器関連肺炎 その④酵母は美味なのか?
【誤嚥性肺炎】
誤嚥性肺炎診断のためのグラム染色
唾液誤嚥を疑う症例
NHCAPの一例
Polymicrobial pattern
唾液と逆流の違い
【膿胸】
膿胸
膿胸の治療経過をグラム染色で追ってみると
膿胸なのに菌が見えない
くさくない膿胸
やっぱりありました入れ歯
【検査材料の評価】
Gecklerなんぼやねん?
検体が悪いけどどうしましょう
これは痰だろうか?
検体はいつまで有効なん?
塵埃細胞
第2章 グラム陽性菌
【ブドウ球菌】
医療従事者の肺炎
MRSA肺炎はどうやって起きるのでしょうか?
これは保菌と判断しました
どうしてMRSAを疑うか
黄色ブドウ球菌は感染源が判らない?
【肺炎球菌】
当直中に出会った症例
莢膜を見逃してませんか?
塗抹は現場を押さえている唯一の証拠です
肺炎球菌が培養で発育しにくい理由
多彩な形態に惑わされない
尿中抗原陰性の解釈
【その他のグラム陽性菌】
グラム染色で嫌気性菌の鑑別を
肺化膿症で見られた嫌気性グラム陽性球菌
易感染者の膿性痰から出たグラム陽性桿菌
肺放線菌症を疑うとき
抗菌薬で改善しない感冒様症状
第3章 グラム陰性菌
【肺炎桿菌】
大葉性肺炎の代表菌
緑膿菌と肺炎桿菌
もうカルバペネム入ってるよぉ
肺炎桿菌で抜けた莢膜見つけました
こんな膿胸珍しいかも
【インフルエンザ菌】
重症でないけど肺炎です
インフルエンザ菌による肺炎
インフルエンザ菌の多形性
豪華なメンバー
似たもの同士
【緑膿菌】
長ーく伸びた桿菌?
緑膿菌はなぜ耐性菌として注目されるのか?
鉄のさび色
菌名を迅速に報告するべきでしょうか?
緑膿菌のムコイド像
【モラクセラ】
気管支炎で見過ごされがち?
これはもう迷わない
区別つきますか?
【レジオネラ】
レジオネラ肺炎の喀痰塗抹の見方
【フソバクテリウム】
膿胸から見える情景
お前はもう死んでいる
第4章 その他の細菌、真菌
【マイコプラズマ】
マクロライドが奏効しない市中肺炎
【抗酸菌】
グラム染色で見える結核菌
気管支鏡で潰瘍が見つかった
非結核性抗酸菌もキレイに抜けます
影が二つ
【真菌】
カンジダの貪食像
誤嚥性肺炎の後に出現したカンジダ
日和見感染菌を見たとき
本書を出版するのは誰のためか。そう聞かれたら、「自分のため」と答えるでしょう。なぜかと言うと、本書は『グラム染色道場』という個人的な意見が詰まったブログを元にしています。このブログは備忘録として活用していたこともあり、まさに自己中心的な内容なのです。
ところが、自分では想像もしていなかったことですが、多くの人からこのブログが「勉強になる」「面白い」というコメントを頂くようになりました。自分自身のために書き残した情報が共感により拡散し、感染症診療の中で使えるアイテムになったからだと思います。
グラム染色は従来から、培地上の微生物を染めて同定の手段としてきました。また、肺炎球菌やインフルエンザ菌、緑膿菌など一部の細菌については、材料中で確認された特徴から推定菌として報告してきました。しかし、グラム染色は微生物検査室だけのものではなく、感染症診療にあたるスタッフ全員にとって大きな武器になることが認識されつつあります。
本書は、菌種推定のコツはもちろんのこと、グラム染色所見において白血球やフィブリンなどの生体由来物質の染色像や、推定菌の情報を診療にどのように活用するかという手順書のようなものです。ブログを始めた当初は、「そこまで言って大丈夫なのか」、「間違った情報を発信した場合にどう責任を取るのか」とか「医師が検査室に来て、ここまで分からないのかと詰め寄って困る」などのご意見を頂きましたが、今では炎症の状態を含めて結果報告することが普通になりつつあります。
今回は、グラム染色の中では比較的難しく、興味深いと思われる喀痰グラム染色所見を中心に一冊にまとめました。短時間で読めるよう、あえてコンパクトな構成にしましたので、気軽に読んでいただければ幸いです。
出版にあたり、ブログを始める機会を頂いた奈良県立医科大学の笠原敬先生、ブログ発信について背中を後押しして頂いた国立国際医療研究センターの大曲貴夫先生に深謝致します。
2019年1月 山本 剛