編著: | 菅谷憲夫(慶應義塾大学医学部客員教授,WHOインフルエンザガイドライン委員,前 神奈川県警友会けいゆう病院 感染制御センター長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 210頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2023年10月17日 |
ISBN: | 978-4-7849-5484-1 |
版数: | 初版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
【chapter】
1.総 論
A.今冬のインフルエンザとCOVID-19
B.鳥インフルエンザの最新状況
column 1 北海道における鳥インフルエンザ
C.これからのCOVID-19対策
2.ウイルス学的知見
3.予防・治療
A.成人のインフルエンザの予防・治療
B.高齢者などハイリスク患者のインフルエンザの予防・治療
C.小児のインフルエンザの予防・治療
D.妊婦のインフルエンザの予防・治療
4.ワクチンの有効性
5.治療薬
6.検査・診断
7.院内感染対策
column 2 高齢者施設の施設内感染対策
8.学校での感染症対策
9.インフルエンザ脳症およびCOVID-19に伴う急性脳症の診断・治療
【Q&A】
Q1 COVID-19ワクチン接種後の死亡者は多発しているのか?
Q2 COVID-19の迅速検査について
Q3 血液腫瘍患者,HIV患者など免疫が低下している場合のインフルエンザワクチンの効果について
Q4 マスク・手洗い・うがい,室内空気を対象とした種々の空間除菌製品のインフルエンザやCOVID-19に対する予防効果について
column 3 「フルミスト®」を誰に勧めるか? ─2024年度からの解禁に向けて
Q5 咽頭画像によるインフルエンザAI判定法とは?
Q6 インフルエンザのオンライン診療について
Q7 成人:検査でインフルエンザ,COVID-19いずれも陽性になった場合(同時感染)の対応は?
Q8 小児:検査でインフルエンザ,COVID-19いずれも陽性になった場合(同時感染)の対応は?
日本は今季,インフルエンザ大規模流行に警戒
●北半球での流行
北半球諸国では,2020-21シーズンは新型コロナ出現の影響でインフルエンザの流行はなかったが,翌2021-22シーズンにはA(H3N2),いわゆるA香港型の小規模な流行があり,続いて2022-23シーズンには,A(H3N2)の大規模流行となった(図1)1)。
●日本ではA(H3N2)の小規模流行
日本は多くの北半球諸国とは異なり,2020-21シーズン,2021-22シーズンと,2年連続してインフルエンザの流行はなかった。2022-23シーズンは3年ぶりのインフルエンザの流行となったが,意外にも小規模なA(H3N2)ウイルスによる流行であった(図1)1)。
●欧米ではA(H3N2)の大規模流行
図21)には, フランスと米国の2018年から2022-23シーズンまでの流行状況を示した。両国ともに,2020-21シーズンはインフルエンザの流行はなかったが,日本とは異なり,2021-22シーズンにはA(H3N2)の小規模流行があり,翌2022-23シーズンは米国,フランスなどの欧米諸国は,最近数年で最大規模のA(H3N2)の流行となった。
●日本は今季,大規模流行か
欧米諸国の流行状況をみると,インフルエンザ再流行の初年度は共通して小流行にとどまるが,2年目は大規模な流行となった。日本は,再流行の初年度2022-23シーズンが小流行であったことに油断することなく,今季,2023-24シーズンは早い時期からの大規模なインフルエンザの流行の可能性があると予測し,広範なワクチン接種,抗インフルエンザ薬の備蓄などの備えが必要と思われる。中国では,2023年2~4月にかけて, 大規模なA(H1N1)pdm09とA(H3N2)ウイルスの混合流行があり,オセルタミビルなど抗インフルエンザ薬の不足が問題となった。
米国では,2021-22シーズンはA(H3N2)の小規模流行であったが,家庭内感染率が2倍以上に増加したことが報告された2)。その原因として, インフルエンザの流行としては1シーズンだけ空いたが,サブタイプでみるとA(H3N2)の流行は2シーズンなく,米国民のA(H3N2)への免疫抗体の低下が指摘された。そのため,昨シーズン(2022-23シーズン)の大規模なA(H3N2)の流行につながったものと思われる。日本も2023-24シーズンは,すべてのインフルエンザサブタイプ,A(H3N2),A(H1N1)pdm09およびB型の流行の可能性が考えられる。
2023年9月 菅谷憲夫
(序文中の図および文献は書籍をご覧下さい)
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。
・ 145ページ chapter8 学校での感染症対策
上から16行目(ページ中ほど)
「オミクロン株の無症状患者では,検体採取日から7日間を経過するまでの期間を出席停止とする。」の一文をご削除下さい。
電子版およびHTML版は修正済です。
【誤】
COVID-19では,発症後5日を経過し,かつ症状軽快後1日を経過するまでの期間を出席停止とする。オミクロン株の無症状患者では,検体採取日から7日間を経過するまでの期間を出席停止とする。なお,ウイルス排出を考慮し,発症から10日を経過するまではマスクの着用を推奨することとされている。
【正】
COVID-19では,発症後5日を経過し,かつ症状軽快後1日を経過するまでの期間を出席停止とする。なお,ウイルス排出を考慮し,発症から10日を経過するまではマスクの着用を推奨することとされている。