今年4月、信州大医学部に「子どものこころの発達医学教室」が開設された。発達障害の初診待ち期間が平均3カ月以上に及び、診療体制整備が全国的に急務となる中、同教室は発達障害を診療できる医師を養成して長野県内各地域の医療機関に配置し、地域の支援ネットワークの構築も目指すという。児童精神科医としての長年のキャリアを持ち、教室の教授に就任した本田秀夫氏に話を聞いた。
発達障害は早ければ乳幼児期に発見されますが、社会参加の問題が起こりやすいのは思春期以降、最近は成人後に問題が顕在化するケースも増えています。乳幼児期から高齢期まで、あらゆる段階での診断ニーズが増大しています。小学生で教員から支援が必要だと認識されている発達障害を持つ子どもは10%程度に上り、支援のニーズも高まっています。
しかし、それに対応できるだけの数の児童精神科医はおらず、専門でない小児科医も必要に迫られて診療しているのが現状です。それは長野県でも全く同じです。県内には10の障害保健福祉圏域があり、発達障害に関しては圏域ごとに中核拠点となる「連携病院」がありますが、児童精神科医は10名程度にすぎません。
そうした事情があり、長野県から信州大が県の事業を受託する形で教室がつくられました。
5年間で35名がひとまずの目標です。普段の診療の中で一次的な診断とアセスメント、療育への助言を担う開業医や総合病院の小児科医、精神科医を30名。各圏域の連携病院で中核となり、困難事例の診療や支援体制整備の会議に出席するような専門的な先生を5名育成できればと思っています。
35名を育成しても県内の診療が円滑に回るまで改善するわけではないですが、対応できる医師を少しでも増やすことが重要です。