No.4915 (2018年07月07日発行) P.24
二木 立 (日本福祉大学相談役・大学院特別任用教授)
登録日: 2018-07-09
最終更新日: 2018-07-04
安倍晋三内閣は6月15日、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(以下、「骨太方針2018」)を閣議決定しました。ただし、社会保障改革についての具体論はなく、翌日の全国紙が報じた「骨太方針」の「概略」にもそれは含まれませんでした。
そこで、本稿では「骨太方針2018」の社会保障改革方針の検討は概略にとどめ、5月21日に内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省が経済財政諮問会議に提出した「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」とそれの報道で特記すべきことも指摘します。
実は、6月5日公表の「骨太方針2018(原案)」の「社会保障」の「基本的考え方」には、「社会保障給付の増加を抑制することは個人や企業の保険料等の負担の増加を抑制し、こうした国民負担の増加の抑制は消費や投資の活性化を通じて経済成長にも寄与する」(50頁)との一文が含まれていました。このような経済界・経済産業省寄りのストレートな主張が盛り込まれたのは「骨太方針2015」以来3年ぶりです。
しかし、この表現は日本医師会や自由民主党の強い批判を受けて削除され、最終文書では、「社会保障制度が経済成長を支える基盤となり、消費や投資の活性化にもつながる」とのほぼ真逆の「基本的考え方」が挿入されました。これは政権・官庁も社会保障改革では一枚岩でないことの表れです。
「骨太方針2018」は、例年と異なり、社会保障給付費抑制の数値目標が示されていません。これは来年予定されている参議院議員選挙への悪影響を懸念した安倍首相の政治判断だと報道されています。
ただし、「団塊世代が75歳に入り始める2022年度の前までの2019年度から2021年度を、社会保障改革を軸とする『基盤強化期間』と位置付け、(中略)社会保障関係費などの歳出について、これに沿った予算編成を行う」(4頁)とされ、2019年度(以降の)予算をめぐって、今後、政権・与党内での激しい攻防が繰り広げられることは確実です。