【第3世代の行動療法であるmindfulness-based stress reduction(MBSR)の有用性】
瞑想をベースとしたmindfulness-based stress reduction(MBSR)は第3世代の行動療法で,randomized controlled trialで有用性が確認されている。MBSRは,呼吸法,静座瞑想法,ボディスキャン,ヨーガ瞑想法,歩行瞑想法など,意識を呼吸や身体の各部位へ向ける瞑想を取り入れた8週間のプログラムである。
これまで心療内科領域の認知や行動面を主に取り扱う心理療法は,第1世代(行動療法),第2世代(認知行動療法)を中心に行われてきた。行動療法では,行動を操作し,不適応行動を修正する。認知行動療法では,思考パターンを修正することにより,感情を統制する。第3世代の行動療法であるMBSRでは,気分や感情を統制する点は第2世代と同様であるが,操作する対象は思考ではなく注意である。第1,2世代の行動療法や伝統的な心理療法では,不快な感情の統制や消去を目標とするが,MBSRでは,不快な感情等の症状を消去や統制することで対処するのではなく,症状と距離をとることで対処し,共存する点が従来の治療法と異なる部分と言える。
MBSRは,がん患者の精神症状,ストレスが関与している慢性疼痛など慢性疾患のQOLや精神症状,ストレス低下に関して有用性が認められている1)。一方,健常群においてもストレス低下が認められている1)。MBSRは,ストレス性疾患の予防と慢性疾患のQOLの改善に有効と言える。
【文献】
1) Gotink RA, et al:PLoS One. 2015;10(4): e0124344.
【解説】
庄子雅保,河合啓介* 国立国際医療研究センター国府台病院心療内科 *診療科長