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【論点】認知症の行動心理症状(BPSD)に向精神薬を投与するか

No.4931 (2018年10月27日発行) P.24

上田 諭 (東京医療学院大学保健医療学部リハビリテーション学科教授)

登録日: 2018-10-24

最終更新日: 2018-10-24

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Bを選びます。多くの認知症において,行動心理症状(BPSD)の原因は本人の心情の乱れや満足感のない生活にあります。自尊心を傷つけられた認知症の人は周囲に不満や反発を示す「正常な反応」をします。これが大半のBPSDの本態です。本人を「そのままでいい」と受け入れ,張り合いある生活をつくることがBPSDに対するあるべき治療であり,向精神薬は最後の手段です。

1 BPSDは「正常な反応」

行動心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)がなぜ生じるか。現在の臨床では,それに対する見方が一面的すぎる。BPSDが「症状」だとされているために,認知症の人がとる周囲にとって不都合な行動を,すべて認知症という「病からくる症状」ととらえてしまう。それは大きな誤りである。認知症の原因として最も多いアルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)について言えば,軽度〜中等度を中心として,BPSDと呼ばれている行動障害のほとんどは,人としての心理的反応である。この反応は大部分が正常なものであり,すぐに病的なものとは言えない。

認知症を発症した人は,自ら記憶や見当識に違和感や不安を感じ始める。ほとんどの人は病感を持つ。やがて人々に気づかれ,指摘や注意を受ける。本人にとっては大きな衝撃となる。それが繰り返されると,周囲に反発が生まれる。周囲から眉間に皺を寄せた顔ばかり向けられ,いつも叱られ馬鹿にされているように感じる。反発や憤りを感じるのはむしろ当然だろう。それが態度や声になって現れると,「認知症で怒りっぽくなった」「暴言が出た」などと評価されてしまう。

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