株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

心身医学における安静時機能的MRI研究

No.4938 (2018年12月15日発行) P.53

権藤元治 (国立国際医療研究センター国府台病院心療内科)

登録日: 2018-12-14

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【近年,神経科学領域でトピックになっているdefault mode network(DMN)は心身医学領域でも注目されている】

default mode network(DMN)は,安静時機能的MRIで分析される0.1Hz以下の神経活動で,目的志向型課題を遂行時に脱賦活するという特徴がある。DMNの構成部位は,頭頂葉内側部,前頭葉内側部,前頭葉背外側部,外側頭頂葉,側頭極,海馬・側頭部内側部などが挙げられる。特に安静時に生起しやすい,自己生成的思考,自己に関する思考に関係している。

心身医学領域において,アレキシサイミア(失感情症)に代表される情動処理の障害や,不適切な生活習慣や行動パターンは自動思考や自己参照処理と関係し,様々な身体疾患の発現に結びついていると考えられるため,DMNの精査は有用と考えられる。既にアレキシサイミアや肥満症,機能性ディスペプシア,摂食障害,慢性疼痛などでの研究報告がある。治療面でも,慢性疼痛への認知行動療法によるDMNの変化が報告されている。

Shpanerらによると,認知行動療法によって疼痛管理に対する自己効力感が上昇した人ほど,DMNと扁桃体の連結が低下した1)。情動と関連が深い扁桃体は,痛みに対する不快感にも関連している。認知行動療法によりDMNと扁桃体の連結が低下し,疼痛に関連した行動が変化したことは注目に値する。このように,DMNを評価することは自己参照機能,つまり内省と深く関連する心身医学領域において有用であると考えられる。

【文献】

1) Shpaner M, et al:Neuroimage Clin. 2014;5: 365-76.

【解説】

権藤元治 国立国際医療研究センター国府台病院心療内科

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top