オンライン診療に取り組む医師を中心に2018年4月に発足した「日本オンライン診療研究会」(会長:黒木春郎外房こどもクリニック院長)の第1回公開研究会が12月9日、都内で開かれた。研究会は現場からの事例報告とシンポジウムで構成。シンポでは、厚生労働省保険局医療課長として2018年度診療報酬改定を担当した迫井正深審議官や中央社会保険医療協議会(中医協)の診療側委員である今村聡日本医師会副会長などが登壇した。
迫井氏は現場からの事例報告を踏まえ、「失礼な言い方だが予想よりもフェアに運用されていると感じた。ぜひこのまま継続していただきたい」とコメント。その上で「オンライン診療は大切な技術。これをいかにうまく育てていくかという視点で、各学会をはじめ日本の医療界全体で考えてほしい」と幅広い議論を求めた。
今村氏は次期改定でオンライン診療の評価を充実させるための課題に触れ、「診療報酬は限られた財源の中で、何か新しいものを評価したら何かを削るといった財政中立的な考えでやっている部分がある。新しい技術を評価するにはエビデンスが必要になる」と指摘。「診療報酬とガイドライン(=オンライン診療の適切な実施に関する指針)は見直すことを前提に作られているので今の形のまま進むわけではない。それまでにしっかりとしたオンライン診療のエビデンスを構築することが重要ではないか」とし、現場の取り組みに期待を示した。
会長を務める黒木氏は、「オンライン診療は1つの新しい診療形態。疾患で対象を決めるのではなく、医師が患者ごとに実施の可否を判断できるようにすべき」と述べ、運用の抜本的見直しを強く求めた。
オンライン診療は18年度改定で保険導入されたが、フロアからは算定要件や施設基準のハードルが高いことや「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」の評価がそれぞれ70点、100点(1月につき)と抑えられたことについて、批判的な意見が相次いだ。
迫井氏は「オンライン診療は基本的な診療技術で、内科診断学の教科書を変えなくてはいけないくらいのものと感じている」との認識を示した上で、対象を特定疾患療養管理料などの算定患者に限定した理由を「おかしな形で保険導入すると医療がとんでもないことになってしまうという危惧が強いことも事実。まずは異論がないような生活習慣病の一定の疾患について保険適応とした」と説明した。
施設基準で緊急時におおむね30分以内に診察可能な体制と定めている点については「離島や僻地ではなく日常診療で使ってもらうということが今回の重要なコンセプトだった。そこで一定の範囲を示した。疑義解釈でも示しているように厳密な規制ではない」と述べた。
点数設定が厳しいという意見に対して迫井氏は、7対1入院基本料の導入後の混乱を例に挙げ、「もっと高い評価をという気持ちは理解できる。しかしクオリティの高い入院医療を評価したいという考えから高い点数をつけたら、日本中が7対1だらけになってしまった。診療報酬上のインセンティブは現場にものすごい効果があるので、一気にドライブがかかり山のようにサービスが提供されるようになり、日本の医療ががらりと変わってしまう可能性がある」と指摘。「診療報酬は怖い。少しずつ進めていくのがオーソドックスなやり方だと思う」と診療報酬が医療に与える影響の大きさを踏まえた対応であることに理解を求めた。