近年、海外の学術雑誌を見て気づくことは、日本からの論文発表が減って、中国、韓国からの発表が増えてきていることである。Harvard大学の留学生数をみても、中国人が最多となり、日本人は少なくなっているとの報道があった。文部科学省の報告でも、2004年8万3000人の海外留学生数をピークに2011年には5万7500人と30%も減少している。一方、中国の海外留学者数は72万人、インドは22万人、韓国は14万人と圧倒的に日本を凌駕しつつ、なお増え続けている。
私の母校の教授が、「留学先があるから行きなさい」と勧めても、二の足を踏む教室員が増えた、と嘆いておられた。日本の若者が内向き志向で、海外留学に興味を示さないことが最大原因である。何故そうなったのか……?ひきこもり、ニ-トなど社会現象として騒がれてから久しい。日本という国があまりにも安全で、安定した相応の幸せな生活ができるから、何も苦労してまで危ない国に行って勉強することはあるまい、と考えているのだろうか?
「人は生まれながらにして平等である」とは、もちろん真理である。しかし、「人の能力は不平等である」ことも真実でありながら、あまり言われない。学校でこれをしっかりと教えないといけないのに、差別はいけない、人権は守らなければならない、としてこれを避けてきたように思う。運動会で駆けっこをすれば、1等、2等、3等……ビリに分かれることは当たり前のことである。これを「差別はいけない」として、手をつないでゴールする運動会があると聞いた。手をつながないまでも、1等、2等、3等と分けないこともあるらしい。足の速い子は勝って讃えられ、ビリの子は残念だったけど最後までよく頑張った、と慰められる。
社会に出れば、「人は能力により差がつく」ことは当たり前のことである。社会に出たら自分に与えられた能力と個性を生かして精一杯頑張ってみる。内向きにならず、大志を抱いて、積極的に海外に出て行く若者が増えていくことを期待する。