京都大学で脊椎外科の研鑽を積んで2年が経過した頃、ブータン国王が来日したニュースを見ながら「ブータン、行ってみたいよね」と家族で雑談をした。翌日、主任教授から「ブータンに行ってくれないか?」と言われたときの驚きは今も忘れない。二つ返事で引き受けたものの、設備などの情報がなく、大学に無理を言って1週間の下見に行かせてもらった。手術室でテクニシャンが手際よく手術器械を見せてくれる。ゲルピとケリソン、骨膜剝離子、ノミも片刃のものが2種類あり、手術はできそうな気がしてきた。透視装置も1台あるが、ハイスピードドリルとかマイクロはなかった。「ネジは?」と聞くと、お菓子の箱の中に入っているバラバラなサイズの20本くらいのネジを見せてくれた。いろいろと想像を膨らませながら、いったん帰国した。
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