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2025年問題と日本の人口[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.64

佐田尚宏 (自治医科大学附属病院病院長)

登録日: 2019-01-04

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2025年問題とその後の医療を考えるとき、人口減少社会についての考察が必要です。日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに減少に転じ、現在1億2649万人(2018年3月確定値)、10年間で約160万人減少しました。2040年にはさらに約2085万人の人口減少が予測されています。この人口減少は全国一律に進んでいる訳ではありません。1970年と1995年の人口を比較すると、全国では約2090万人増加している一方で、秋田、長崎、島根の3県では既に減少しています。秋田県は1980年前後に人口が減少に転じ、少なくとも全国平均よりも約30年早く人口減少が進行しています。秋田県のピーク時人口は約125万人、2040年の推定人口が約70万人で、ほぼ半減することが予想されています。戦争や飢饉、疫病という外的要因がなく、静かに県単位で人口が半減するというのは、歴史的にもごく稀な社会現象です。

65歳以上の高齢者が50%以上を占める「限界自治体」は2015年の国勢調査で全国18町村に増加し、市部では北海道夕張市が高齢者率48.6%と最も近い位置にあります。限界自治体では、まず公共交通の存続が困難になり、移動手段が限定されます。地域の祭事、行政サービスの存続も困難になり、商業施設の規模縮小圧力が強まります。このような限界自治体では住民が自立・自活することが必要になり、自立・自活が困難な社会的弱者の生活は一層困難になります。

人口減少社会に対する医療提供体制の選択肢は、広域化とダウンサイジングです。現在は2次医療圏で完結することをめざしている医療供給体制は、より広域な枠組みを模索することになります。医療のダウンサイジングも必須です。医療の質を保ちながら、量的にダウンサイジングすることがはたして可能なのか、可能であるとすればどうすればよいか、という議論の結論が2025年問題に対する回答になります。医療提供者と医療受給者がきわめて本音で話し合うことが唯一回答を得る手段と考えています。

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