【終末期や精神疾患,認知症などを有する患者は,同意能力に問題を有したり,同意能力に変化を生じたりする恐れがある。したがって,本人の意思が最大限尊重されるべく,適切に対応することが必要である】
2018年3月,厚生労働省は「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」と改訂した。この中では,在宅や施設での療養や看取りの増大を背景とした地域包括ケアシステムの構築に加えて,近年,普及しつつあるACP(advanced care planning)の概念を盛り込んでいるのが特徴である。
ACPとは,将来,自己決定ができなくなると予想される場合,事前に本人が家族等や医療・ケアチームと話し合い,医療やケアを決定するプロセスを言う。そこでは,①本人の意思は変化するものであるから,医療・ケアの方針について継続的に話し合われること,②本人が自ら意思を伝えられない状態を考え,意思を推定しうる家族等の信頼できる者も含め事前に十分に話し合っておくこと,③介護施設・在宅など,治療を受ける現場を想定し検討すること,などが強調されている。
同意能力は,患者の精神・身体状態により変化することがあるため,状況に応じて評価する必要がある。診療行為を受けるかどうかの決定権は患者にあるものの,危険性が少なく利益が大きい場合では,要求される同意能力は低く設定される。決定プロセスを決めるにあたり,治療により同意能力の改善が期待される場合には,積極的に身体的/精神科的治療を行い,状態が安定するか,もしくは改善後にインフォームドコンセントを得る等の工夫も有用である。
【解説】
田中容子 愛媛大学精神神経科