社交不安症/社交不安障害(social anxiety disorder:SAD)は,他人の注視を浴びるかもしれない社会的状況に対して顕著な恐怖や不安を抱き,否定的な評価をされるような行動や不安症状の表出を恐れる状態である1)。「自分が何かばかな事をしたり言ったりするのではないか」「自分の行動により,恥をかいたり,人に拒絶されたりしないか」などと恐れるあまり,人と一緒にいることをひどく恐れ,社交状況を回避するようになる。
DSM-ⅣまでのSADの診断基準では,どちらかというと特定の行為状況への恐怖のほうが重視される傾向にあった。しかし,DSM-52)では,恐怖する社会状況の多さはむしろSADの重症度に関連する要因とされ,スピーチ恐怖症のような,特定の行為状況のみに恐怖が限定されるものを「パフォーマンス限局型」として特定することとなった。つまり,様々な社交場面において恐怖や不安のあるものがSADの中核的な病態である,との考えを表している。また,DSM-Ⅳにあった「恐怖の不合理性の認識」がDSM-52)では外されており,さらに,自分が恥ずかしい思いをすることを恐れるだけでなく,「他者の迷惑になるのではないか」と他人の気分を害することを恐れることが診断基準に加えられている。これらの変更により,SADの病態はわが国で研究されてきた「対人恐怖」により近いものとして理解できるようになった1)。
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