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『平成30年版厚生労働白書』をどう読むか?[深層を読む・真相を解く(88)]

No.4971 (2019年08月03日発行) P.58

二木 立 (日本福祉大学名誉教授)

登録日: 2019-07-31

最終更新日: 2019-07-30

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厚生労働省は7月9日、『平成30年版厚生労働白書』を公表しました。テーマは「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」です。

昨年版のテーマは「社会保障と経済」で、「冷静な頭脳」に基づく記述がなされていたのと対照的に、今年版は「温かい心」に裏打ちされた記述が多く、厚生労働行政の守備範囲の広さに改めて驚かされます。以下、第1部(全4章)の構成・内容を簡単に紹介すると共に、私の評価・疑問を述べます。

2つの不祥事で公表が9か月遅れ

その前に、今年版の最大の特徴を述べます。それは公表が昨年版に比べ9か月も遅れたことです。その理由は、昨年発覚した2つの不祥事(障害者雇用率制度、毎月勤労統計調査や賃金構造基本統計調査等の「不適切な取り扱い」)への対応のためです。「はじめに」の4割(69行中28行)がこれらの「反省」と「お詫び」に当てられ、59〜66頁、498〜500頁に対応状況が詳述されています。

私は、日本福祉大学で長年、学長等の管理職を務めましたが、その際もっとも重視したことは「法令遵守」でした。大学院での論文指導では、調査の実施と結果の解釈を厳格に行うことを求めました。それだけに、政府・厚労省が法令違反の「不適切な実務慣行」を長年続けていたことに愕然としました。特別監察委員会等による検証と対策が行われたとはいえ、厚労省が信頼を回復するには相当長期間を要すると思います。

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