以前に、「糖尿病足のアジア侵略(Diabetic Foot invades not Japan, but also Asia)」というタイトルで「炉辺閑話2016」に掲載させて頂きました(日本医事新報. 2016;4784:73)。糖尿病人口が日本のみならず世界中(特にアジア)で爆発的に増加しており、その合併症である下肢病変で脚を失う方々が増加している、というお話です。
去る2019年7月1日付けで、日本フットケア学会と日本下肢救済・足病学会は、新しく「日本フットケア・足病医学会」へと発展的に統合しました。この新学会は、糖尿病、末梢動脈疾患(PAD)、静脈うっ滞性潰瘍、その他の下肢病変で悩んでおられる患者さんのために下肢を救い、患者さんオリジナルの「歩行を守り、生活を護る」ことを目標としています。その学会構成員は、医師(循環器内科医、血管外科医、形成外科医、糖尿病内科医、腎臓内科医、透析医など)、看護師、理学療法士、作業療法士、義肢装具士、介護士、医用工学など様々な職種からなり、まさに烏合の衆です。これだけのメンバーが揃って初めて1人の脚を救うことにつながります。これほど多くの職種、多くの診療科を必要とする疾患は他にはありません。
しかし、未だこれらの疾患による潰瘍に対して「とりあえず軟膏で」や「とりあえず内服薬で」や「とりあえず抗菌薬で」などの「とりあえず治療」が蔓延し、下肢を守るための医療が行われていないのが現状です。それは、一歩一歩、患者さんから歩行を奪っていく行為に過ぎません。国民病としての糖尿病患者における下肢病変への認知、正しい履物の重要性の認知や、看護師の方々によるきめ細かいフットケアの普及など、課題は山積みです。ヒトとしてこの世に生を受けたからには、ヒトとしての尊厳である「歩行」という摩訶不思議な機能を生涯持ち続けるための活動は、発展途上で、これからAll Japanで臨んでいかなければなりません。