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【識者の眼】「感染拡大を防ぐために医療機関と老人介護施設に重点的検査を」渡辺晋一

No.5007 (2020年04月11日発行) P.61

渡辺晋一 (帝京大学名誉教授)

登録日: 2020-03-26

最終更新日: 2020-03-26

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日本では今のところ新型コロナウイルス感染症の拡大について「持ちこたえている」との専門家会議の発表が3月19日にあり、日本の医療は優れているからだと言う人がいる。しかし感染者を特定する検査をしないで、どうして持ちこたえていると判断できるのであろうか。治療法がないのだから検査しても仕方ない、というコメントを耳にしたが、これは公衆衛生が何であるかを知らない自己中心的な考えである。さらに検査をすると医療崩壊を招くとの意見が専門家と称される人からも出ている。しかしこれは検査と治療の区別ができない人の考えである。感染防御の基本は①感染者の発見、②隔離、③治療─である。感染者を発見しなければ、その先に進むことはできない。

わが国の感染対策が海外と大きく異なる点は検査件数である。日本にはPCR検査キットが多数あり、PCR検査を行える民間検査会社は数多く存在する。また不適切な部位から検体を採取すると陰性になるが、検体採取の教育を受けた臨床検査技師は大勢いる。検体採取をする場所は、病院内であれば一般の患者と隔離した場所を作ればよいし、海外のようにドライブスルーで行うとか、電話ボックス型の検査施設を作ればよい。

確かに日本人全員の検査をするのは無理であるが、感染を防ぐために重点的に検査すべき施設がある。それは医療機関と老人介護施設などである。最近帰国者に感染者が増えているが、それは帰国者が検疫を受けているからである。より重要なのは集団感染を見つける事である。しかし接客業(医療機関を含む)は、閉鎖を恐れて、検査をしない。そこで行政の働きかけが必要となる。

感染が分かった場合は、日本では全員を入院させているが、これは医療崩壊を招く要因になる。感染が分かった人は、入院ではなく、隔離である。少なくとも無症状の人は自宅待機でもよい。ただし同居家族がいる場合は、隔離施設に入る必要がある。実際、中国・武漢からチャーター便で帰国した人は、ホテルや公的施設の宿舎に隔離されたのではないのか。そして治療が必要な人だけを入院させればよい。このような感染防御の基本を日本政府は知らないのであろうか。最近オリンピックを1年程度延期すると政府は言っているが、これは政治的な判断で、感染が収まるまで延期するというのが医学的な正しい判断である。

渡辺晋一(帝京大学名誉教授)[新型コロナウイルス感染症]

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