株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症:産科の医療崩壊メカニズム」畑山 博

No.5010 (2020年05月02日発行) P.59

畑山 博 (医療法人財団足立病院理事長/社会福祉法人あだち福祉会理事長)

登録日: 2020-04-23

最終更新日: 2020-04-23

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による医療崩壊のパターンは、「医療物資=物」か「医療スタッフ=人」で考えると3パターンに分けることができます。

①は、「人」も「物」もない状態です。患者さんの急増で、人も物もすべてが底をついて、どうしようもない状態。いわゆる、オーバーシュート型。中国・武漢、イタリア、スペイン、米国・NYなどがこれに当たります。たくさんの医療関係者の命を奪い、ロックダウンして、宿主がいなくなってウイルスがなくなるのを待つだけになります。

②は、「人」がない状態です。患者さんや付き添い、あるいはスタッフ起点の院内クラスター発生で、医師、看護スタッフが濃厚接触者として自宅待機になり、診療を続けられなくなる状態。施設も物資もあるけど、スタッフが自宅隔離され働けない状態です。これは院内感染型で、永寿総合病院などが当たると思います。

最後に、③「物」がない状態。医療者にとって、治療の時に必要とされるマスク、ガウン、消毒薬、人工呼吸器あるいは薬剤までもがなくなり、治療を継続できなくなる状態。今の日本の医療状態は、これに当たると思います。COVID-19患者数、死亡者数が少ないから、まだ医療崩壊は起きてない!と言う理論は成り立たないことが分かります。既に、この状態は医療行為を行えない状態であり、状況が改善しなければ、①に移行します。

産婦人科、特に産科の場合を考えてみたいと思います。分娩数があらかじめ決まっていますし、COVID-19が疑われる場合は、指定の総合病院に行きますので、産婦人科で①は起こりません。③に関しても、実は、産科医療は正常産であれば、ほとんど医療材料や薬は要りません。帝王切開でさえ、なくてもどうにかやれるはずです。そうすると、産婦人科の医療崩壊は、②のタイプによると考えています。症状のない、あっても軽い患者さんの分娩に携わった医師、看護師、助産師が起点になり、院内感染が広がり、濃厚接触者が待機になって分娩対応ができなくなるパターンです。つまり、産科医療を医療崩壊から守るためには、院内に新型コロナウイルスの無症候性キャリアを入れないようにすることが肝心です。PCR検査による、ユニバーサルスクリーニングが効果的かもしれません。

畑山 博(医療法人財団足立病院理事長/社会福祉法人あだち福祉会理事長)[新型コロナウイルス感染症

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top