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【識者の眼】「災害時の住民の覚悟を支えることができるか」中村悦子

No.5011 (2020年05月09日発行) P.33

中村悦子 (社会福祉法人弘和会「訪問看護ステーションみなぎ」管理者)

登録日: 2020-05-08

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今年3月13日(金)未明、石川県能登地域を震源とするマグニチュード5.5の地震が発生し、輪島市は震度5強でした。石川県内では、2007年の能登半島地震(震度6強・マグニチュード6.9)以来、13年ぶりのことです。当時の私は公立病院の地域医療連携室で退院調整に関わりながら訪問看護業務をしていましたが、その日は100km先の金沢市に出かけており震度3を体感しただけでした。

今回の地震は未明だったこともあり自宅にいましたが、震度5強の揺れは初体験だったので私自身が大変な恐怖の中にいました。真夜中にもかかわらず、心配してくれた知人たちから電話やメールを頂戴しました。私は感謝の気持ちで対応しながらも困惑していました。揺れた時間は短かったのですが、家の後ろは断崖絶壁で、前は河口という環境に嫁いだ私は、「どこにも逃げられず、ここで死ぬのだ」と思いました。

そんな時、スタッフの一人から「利用者さんを見てきますから指示を下さい」というメールをもらいましたが、2次災害を危惧して「夜が明けたらにしましょう」と答えました。夜が明けると、再びそのスタッフから「独居の方の安否を確認してきました」というメールをもらった時には涙が出そうになりました。自分の無力さを痛感しました。

昨年、介護者の会に参加した時に「災害時、どうすべきか」という話題が出ました。重度の認知症の妻を介護している男性が「妻が認知症になってから、避難しようと思ったことはない。避難しても皆さんに迷惑をかけることになる。そう思ったら避難はできない」と答えたのを聞いて切なくなったことを思い出しました。

今回の地震からもうすぐ2カ月になります。その後はコロナの話題で持ちきりですが、落ち着いたら利用者さんに聞かなければと思っています。「もし災害がきたら、どうしますか?逃げますか?留まりますか?」。皆さんの覚悟を知り、その覚悟に寄り添うことも我々コミュニティナースの仕事だと思います。

中村悦子(社会福祉法人弘和会「訪問看護ステーションみなぎ」管理者)[みんなの保健室わじま][コミュニティナース]

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