株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「5段階で評価する手術の技術度」岩中 督

No.5012 (2020年05月16日発行) P.69

岩中 督 (外科系学会社会保険委員会連合会長、埼玉県病院事業管理者)

登録日: 2020-05-14

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

前稿(No.5007)では、外保連手術試案の考え方について述べた。本稿では手術の技術度について述べる。

外保連手術試案の策定で最も議論が沸騰する技術度の評価について、外保連手術委員会の現状を紹介する。手術の技術度(難易度)を評価するには様々な方法がある。外保連では、その手術を安全かつ確実に行うために必要な外科医の修練期間を技術度の評価に採用しているが、この方法はどの領域からも一応の納得をいただいている。しかしながら、技術度は修練を続けても無限に向上するわけではないし、卒後5年目ではできなくて6年目になるとできる技術とは?などについても説得力のある説明は困難であることから、手術試案第7版より、①専門医制度を参考にして技術度を定義、②修練開始後15年で適切な技術に到達できる─という仮説のもとに5段階の区分とした。すなわち、①技術度Aは初期研修医で可能な技術、②技術度Bは卒後5年で初期臨床研修修了者レベル、③技術度Cは卒後10年で基本領域の専門医レベル、④技術度Dは卒後15年でサブ領域の専門医あるいは基本領域の専門医更新者や指導医クラスのレベル、⑤技術度Eは卒後15年以上で特殊技術を有する専門医クラスのレベル─とし、技術度に応じた外科医の時給を決定した。

第7版当時は技術度E群手術が500術式以上あったが、第8版への改訂時点で「技術度Eというのはわが国でも一部の施設あるいは一部の外科医のみが実施できる手術」という位置づけとし、各加盟学会で技術度をE群からD群へ下方修正する領域横断的な議論を行った。一部の学会から「うちの領域は難しい手術が多いんだ!」という声がしばしば上がり、「E群手術は普及させることが困難な標準化しづらい手術であり保険収載にはふさわしくないのではないか」という理屈で押し返し、手術委員会は毎回のように紛糾したが、最近では技術度Eの手術として新規収載される術式は少なくなった。これらの議論は厚労省の担当者や医療技術評価分科会の分科会長(当時)にも知れ渡り、定期的に行う実態調査と併せて、外保連手術試案の価値をいっそう高めてくれるきっかけにもなった。次稿では、手術試案における人件費の決め方について述べる。

岩中 督(外科系学会社会保険委員会連合会長、埼玉県病院事業管理者)[外保連]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top