アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)の前駆状態として特に注目されることが多いが,①記憶と②そのほかの認知機能(遂行,注意,言語,視空間認知)障害,の組み合わせパターンで,健忘型と非健忘型に分類される。前者では記憶のみの認知機能ドメイン障害タイプ(①)と,記憶以外に複数の認知機能ドメイン障害を持つタイプ(①+②)が知られ,後者では認知障害が記憶以外の1領域に限られるタイプ(②)もしくは,認知障害が記憶以外の複数領域に広がるタイプ(②)に分類される。軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)は決して固定された状態でなく,認知症に進展するタイプ(コンバーター)や,逆に健常な状態に戻るタイプ(リバーター)が存在し,こうしたリスクを層別化する中で早期から対峙するため,至適化された治療薬開発が切望されている。
本人と家族から認知機能低下の訴えがあるが,その認知機能は正常とは言えないものの認知症基準を満たすことはない。このため,複雑な日常生活動作(ADL)に最低限の支障はあっても,基本的な日常生活機能が正常であることを確認する。すなわち,年齢や身体機能を勘案しても,基本的ADLや手段的ADL(instrumental ADL:IADL)能力がほぼ自立している。
MCIの原因となる基礎疾患は多彩であるが,MCIに似て非な治療介入効果が期待できる状態をまず鑑別する(薬剤性,うつ,ビタミンB12欠乏,甲状腺機能低下症等)。ついで,薬物療法としては心血管性危険因子対策を,非薬物療法としてはライフスタイルへの介入を考慮する。MCIに特化した治療薬はなく,専ら危険因子対策予防への投薬や多因子介入によるリスク軽減が主体となる。
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