1 総論:2016から2019へ
2 なぜ変わったか,実臨床での対応【診断・検査】
3 なぜ変わったか,実臨床での対応【外科手術および周術期治療】
4 なぜ変わったか,実臨床での対応【局所進行膵癌】
5 なぜ変わったか,実臨床での対応【遠隔転移を有する膵癌】
6 なぜ変わったか,実臨床での対応【支持・緩和療法】
このほど膵癌診療ガイドラインが改訂され,2019年版が発刊された。2016年版の発行後,外科切除においてはborderline resectable(BR)膵癌の概念が取り入れられたことにより,その適応や術前・術後の補助療法について変化がみられた。
切除不能膵癌に対する化学療法においては,1次治療における新規治療法の登場はなかったものの,MM-398やペムブロリズマブといった新規薬剤が掲載された。検査においては超音波内視鏡装置(EUS)が推奨されており,それを用いた胆道ドレナージ手技についても議論されている。
支持療法においても以前から推奨されていた多職種チーム医療だけでなく,advance care planning(ACP)などの新しい概念についても紹介されている。
このように診断,治療のいずれの領域においても進歩がみられており,難治癌と呼ばれる膵癌に対する診療は徐々に改善されつつある。
PETの適応と,近年徐々に臨床現場に浸透してきたEUSについて,変更がなされた。PETは2016年版では良悪性の鑑別に用いることが提案されていたが,メタアナリシスによると,PETはCTと同等の診断能を有しているものの,CTに比べての優位性は認められていないことがわかった。また放射線被曝が多く高額な検査であり,膵癌の確定診断がない場合に保険適用にならないことから,診断には用いないことが提案された(CQ-DD2-2)。一方で,遠隔転移の診断においてはCTより特異度が高いため,病期診断に用いることが推奨された(DSg1-4)。
EUSは脈管浸潤の有無等,T因子の病期診断にも有用であり,CQ-DSg1-3において,造影CTで病期診断や切除可能性が確定できない場合に提案された。ただし術者間差があることや,全国的な普及度もまだ高くないこと,他の画像診断に比べると侵襲的であることが欠点として挙げられ,2019年版のCQ-DD1-4には,EUSの適応決定を慎重に行うべきであると記載された。
超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)については,病理診断法として2019年版に初めて,CQ-DD3-2で提案された。切除可能症例に関しては腹膜播種の可能性を考慮し,EUS-FNAを行うかどうか「十分吟味する」と付記され,切除不能症例については確実な組織診断による薬物選択を行うために,播種の可能性も考慮して「行うべき」と付記された。
PETは遠隔転移の診断がつかない場合に施行を検討する。EUSは適応を十分検討した上で,画像診断・病理診断に活用する。
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