編集: | 鈴木通博(聖マリアンナ医科大学教授) |
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編集: | 四柳 宏(東京大学准教授) |
判型: | A5判 |
頁数: | 208頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2015年04月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-4480-4 |
版数: | 第5版 |
付録: | - |
■ 相次ぐ抗ウイルス薬(DAAs)の登場により、C型肝炎の治療戦略は大きく変わりつつあります。
■ ペグインターフェロン・リバビリン併用療法から、プロテアーゼ阻害薬を含めた3剤併用療法、さらにはDAAsのみを用いたインターフェロンフリー療法まで、治療の選択肢をわかりやすく解説しました。
■ C型肝炎のインターフェロン療法を確立した飯野四郎先生の名著を、第一線の研究者らが改訂。今後認可されるであろう新規抗ウイルス薬を含め、最新の情報に基づいて記載しました。
第1章 C型慢性肝疾患の疫学
1.1 日本での患者数の推定
1.2 C型肝炎の感染経路
1.2.1 輸血,医療行為による感染
1.2.2 母子感染
1.2.3 性行為感染
1.3 C型肝炎の自然経過
1.3.1 輸血後肝炎(C型肝炎)の典型例
1.3.2 B型慢性肝疾患との比較
1.3.3 肝硬変・肝細胞癌との関連
1) 肝細胞癌患者のHBs抗原,HCV抗体陽性率
2) 肝硬変・肝細胞癌に到るまでの期間
第2章 C型肝炎の診断
2.1 C型急性肝炎の診断
2.1.1 病歴と身体所見
1) A型肝炎
2) B型肝炎
3) C型肝炎
4) E型肝炎
5) 肝炎ウイルス以外のウイルスによる肝障害
6) アルコール性肝炎
7) 薬物性肝障害
8) 胆道疾患に伴う肝障害
9) 循環不全に伴う肝障害
10) 自己免疫性肝炎など
2.1.2 検査成績
1) ウイルス性肝炎
2) その他の肝障害
2.2 C型慢性肝疾患の診断
2.2.1 病歴と身体所見
1)B型慢性肝炎・肝硬変・肝細胞癌
2)C型慢性肝炎・肝硬変・肝細胞癌
3) アルコール性肝障害
4) 脂肪肝
5) 自己免疫性肝障害
6) 薬物性肝障害
7) 代謝異常による肝障害
2.2.2 検査成績
1) 慢性肝炎
2) 肝硬変(慢性肝炎との鑑別)
3) アルコール性肝障害
4) 脂肪肝
5)自己免疫性肝障害
2.3 HCV感染による肝外病変
2.3.1 クリオグロブリン血症
2.3.2 腎疾患
2.3.3 シェーグレン症候群
2.3.4 糖尿病
2.3.5 甲状腺障害
2.3.6 悪性リンパ腫
2.3.7 扁平苔癬
2.3.8 心筋障害
第3章 肝炎ウイルスマーカー
3.1 A型肝炎のウイルスマーカー
3.2 B型肝炎のウイルスマーカー
3.2.1 HBVマーカーの種類
1)HBs抗原
2)HBs抗体
3)IgM-HBc抗体
4)HBc抗体
5)HBe抗原・HBe抗体
6)HBV DNA
7)HBcrAg(コア関連抗原)
8)HBV遺伝子型
3.2.2 B型急性肝炎でのウイルスマーカーの推移
3.2.3 B型慢性肝炎でのウイルスマーカーの推移
3.3 D型肝炎のウイルスマーカー
3.4 E型肝炎のウイルスマーカー
3.5 C型肝炎のウイルスマーカー
3.5.1 HCV遺伝子の構造
3.5.2 HCV抗体
1) 第1世代HCV抗体
2)HCV core抗体
3) 第2世代HCV抗体
4) 第3世代HCV抗体
3.5.3 HCV core抗原定量
3.5.4 HCV RNA
1)HCV RNA測定系
2)TaqMan法
3)アキュジーン法 (m-HCV法)
4)HCV RNA測定系の相関
3.5.5 C型急性肝炎とHCVマーカー
3.5.6 C型慢性肝疾患とHCVマーカー
第4章 IFNを中心としたC型肝炎の治療
4.1 インターフェロン
4.1.1 IFNの種類
1)IFN -α
2)IFN -β
3)IFN -λ
4)IFNの種類による作用・副作用の違い
5)IFN製剤の種類
4.1.2 IFNの作用機序
4.1.3 IFNの血中動態とHCVに対する抗ウイルス作用
4.1.4 IFNの連日投与と利用効率
4.1.5 IFN投与に伴う生体内の諸変化
1) 血球の変化
2) 血液生化学検査値などの変化
4.2 リバビリン
4.2.1 リバビリンの作用
4.2.2 リバビリンの副作用
4.3 インターフェロン治療の実際
4.3.1 IFN療法のはじまり
4.3.2 C型慢性肝炎に対するIFNの治療効果判定の変遷
4.3.3 ALT正常化の意義
4.3.4 現在のC型慢性肝炎の治療効果判定
4.3.5 IFN単独療法の比較試験
4.3.6 IFN単独療法のHCV排除効果に関与する因子
1)血中HCV量とHCV genotype
2)HCV遺伝子の変異
4.3.7 IFN・リバビリン併用療法
4.3.8 C型急性肝炎に対するIFN治療
4.4 PEG-IFN・リバビリン併用療法
4.4.1 PEG-IFNの血中動態と抗ウイルス活性
4.4.2 PEG-IFNα2b・リバビリン併用療法の比較試験
1)投与期間とウイルス陰性化時期
2)SVR率に寄与する因子
4.4.3 PEG-IFNα2b・リバビリン併用療法の延長投与
4.4.4 PEG-IFNα2a・リバビリン併用療法の比較試験
4.4.5 Genotype 1b高ウイルス量以外のC型慢性肝炎に対するPEG-IFN治療
4.4.6 PEG-IFN・リバビリン併用療法における効果予測因子
1)HCV遺伝子変異
①HCV core領域aa70とaa91のアミノ酸置換
②HCV NS5A領域ISDRとIRRDR
2)宿主側因子
①IL28B遺伝子多型
②IFN-λ4 ΔG/TT遺伝子変異
4.4.7 インスリン抵抗性とIFN治療
1)インスリン抵抗性と抗ウイルス治療効果
2)HCVによるインスリン抵抗性誘導の機序
4.5 インターフェロン投与に伴う副作用
4.5.1 精神神経症状
4.5.2 リバビリン併用療法時の脳血管障害
4.5.3 間質性肺炎
4.5.4 腎機能障害
4.5.5 皮膚障害
4.5.6 甲状腺炎
4.5.7 自己免疫性肝炎
4.5.8 その他の自己免疫疾患
4.5.9 心血管系などに対する副作用
4.5.10 代謝異常
4.5.11 眼症状
4.5.12 聴力障害
4.5.13 味覚障害
4.5.14 感染症の誘発
4.6 インターフェロン少量長期療法
4.7 肝庇護療法および瀉血療法
4.7.1 ウルソデオキシコール酸(ウルソ®)
4.7.2 強力ネオミノファーゲンC®(SNMC)
1)SNMCの投与対象および投与法
2)SNMCの副作用
4.7.3 瀉血療法
4.7.4 対症療法の実際
第5章 DAAsによるC型肝炎の治療
5.1 DAAsの種類と標的蛋白
5.1.1 プロテアーゼ阻害薬
5.1.2 NS5A阻害薬
5.1.3 ポリメラーゼ阻害薬
5.2 プロテアーゼ阻害薬を含む3剤併用療法
5.2.1 テラプレビルによる3剤併用療法
5.2.2 シメプレビルによる3剤併用療法
1) シメプレビルとテラプレビルの違い
2) シメプレビルを用いた臨床試験
3) シメプレビルの副反応
4) シメプレビルを使う際の注意点
5.2.3 バニプレビルによる3剤併用療法
5.3 IFNフリー療法
5.3.1 IFNフリー療法の適応
5.3.2 アスナプレビル・ダクラタスビル併用療法
5.4 C型肝炎治療の今後の展望
5.4.1 DAA comboの薬剤選択
1) ベースラインに薬剤耐性変異が存在するかどうか
2) 薬剤耐性の生じやすい薬かどうか
3)DAAの使用歴があるかどうか
4) 副反応
5.4.2 今後発売が予定されているDAA
第6章 難治例への対策
6.1 肝硬変
1) 肝硬変が代償期にあるかどうかの判断
2) 肝細胞癌の合併
3)IFN投与中の肝機能の増悪
4) 合併症
5) ウイルス排除後の発癌
6.2 透析例
6.3 HIV合併例
6.4 移植例
6.5 小児例
第7章 C型慢性肝炎患者に対する生活上の注意点
7.1 安静
7.2 食事
7.3 他人への感染
7.4 薬物・健康食品
本書は1993年2月に初版が出版され、2001年9月の第4版まで故飯野四郎先生が一人で執筆をされてきた。C型肝炎の疫学、診断、さらに肝炎ウイルスマーカーにつき概説し、インターフェロン(IFN)療法の実際を詳細に述べた名著である。
飯野先生は、1988年から厚生省特定疾患“難治性の肝炎”調査研究班の治療分科会長として、わが国におけるIFN療法の開発から確立まで尽力されてきた。先生の原稿は、肝炎ウイルスの豊富な知識と実地臨床における十分な経験をもとに、ほとんど加筆、訂正なく書き綴られ、簡潔で明瞭な表現となっている。
先生は本書の第4版で、IFNは本質的にはウイルスの増殖を阻止するものであり、C型肝炎ウイルス遺伝子を破壊するものではなく、持続的ウイルス排除が約30%も得られたことが驚異的である、と述べておられる。
その後の14年間で、IFNの治療成績は著しく向上し、さらに直接ウイルスを破壊する経口剤direct-acting antiviral agent(DAA)が登場し、DAAのみの治療が開始されるなど、目まぐるしい変化がみられた。その結果、ウイルス排除率は限りなく100%に近づいている。一人でも多くの患者さんの予後の改善を願っていた先生がこの状況をご覧になったら、何とおっしゃるだろうか。
今回の改訂新版は、飯野先生にゆかりのある先生方にお願いして、現状に照らし合わせて改訂と加筆を行ったものである。飯野先生の前版にならって、なるべく簡潔明瞭な表現となるよう心がけた。
C型肝炎治療は、IFNが中心の治療からDAAが中心となるターニングポイントを迎えている。このタイミングで本書が多くの臨床医の先生方にとって、 C型肝炎の診断・治療を理解する一助となれば幸いである。
2015年4月
鈴木通博・四柳 宏