政府の経済財政諮問会議は7月8日、「経済財政運営と改革の基本方針2020(仮称)」(骨太の方針2020)の原案を了承した。新型コロナウイルス感染症への対応と経済活動の段階的引き上げを両立させる「新たな日常」の実現に向けて、社会全体のデジタル化を強力に推進する方針を明示。医療・介護分野においても、データ利活用やオンライン化を加速し、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の拡充も含めたデータヘルス改革を推進する考えを打ち出した。与党との調整を経て、次回会合で最終取りまとめを行う。
原案は、新型コロナウイルス感染症と共存する「新たな日常」の構築の原動力となるデジタル化への集中投資・実装と、その環境整備を今後の経済戦略の柱に据えた。行政のデジタル化を進める際の基盤になるマイナンバー制度の抜本的改善では、PHRの拡充を図るため、「21年に必要な法制上の対応を行い、22年を目処に、マイナンバーカードを活用して、生まれてから職場等、生涯にわたる健康データを一覧性をもって提供できるよう取り組む」と記載した。
医療分野のデータヘルス改革ではこのほか、▶被保険者番号の個人単位化とオンライン資格確認導入のための「保健医療データプラットフォーム」の本格運用を20年度中に開始する、▶患者の保健医療情報を本人が全国の医療機関等で確認できる仕組みについて、特定健診情報は20年度中、レセプトに基づく薬剤情報は21年度中、手術等の情報は22年度中にそれぞれ稼働させる―ことなどを盛り込んだ。オンライン診療に関しては、新型コロナウイルス感染症対応の時限的措置の効果や課題を検証してエビデンスを見える化することや、実施の際の適切なルールを検討するとした。
社会保障全般の今後のあり方では、「骨太方針2018、骨太方針2019等の内容に沿って、社会保障制度の基盤強化を着実に進める」と明記。個別施策では、医療提供体制について、感染症の視点も織り込んだ質が高く、効率的で持続可能な体制を早急に整備するとし、病院と診療所の機能分化と連携、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師の普及に取り組む姿勢を改めて示した。
医療関係団体や医薬品業界が見送りを強く要請している中間年の薬価調査・薬価改定(19・20年度実施予定)には触れなかった。ただ、西村康稔経済再生担当相は会議後の会見で記者からの質問に答え、「具体的な記載はないが、骨太方針2018・骨太方針2019に基づき引き続き社会保障制度改革を順次実行するという旨を記載しており、これまでの対応方針に変更はない」とコメントしている。