レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)は,αシヌクレイン蛋白質を主要成分とするレビー小体が大脳皮質に広範に出現し,進行性の認知症を呈する変性性認知症疾患であり,アルツハイマー型認知症(AD)の次に多い。認知機能障害のほか,多彩な精神症状,パーキンソニズム,自律神経障害等を認めることが特徴である。認知症症状がパーキンソニズムに先行する場合はDLB,パーキンソン病(PD)発症から1年以上経過した後に認知症が発症する場合は,認知症を伴うPD(PD with dementia:PDD)と言うことがあるが,両者に本質的な違いはなく,レビー小体病という1つの疾患スペクトラムとしてとらえられている。
2017年に改訂された診断基準を用いる1)。中心症状は進行性の認知機能障害で,必須である。ADと異なり,病初期には記憶障害が目立たないことも多く,注意障害や遂行機能障害,視空間認知障害が目立つことがある。中核的特徴は,認知機能の変動,繰り返す構築された具体的な幻視,レム睡眠行動障害(REM sleep behavior disorder:RBD),パーキンソニズムである。パーキンソニズムは必ずしも早期に出現しないことに注意する。支持的特徴としては,抗精神病薬に対する過敏性,姿勢保持の不安定性,易転倒性,失神や一過性無反応,便秘・起立性低血圧・尿失禁などの自律神経障害,過眠,嗅覚障害といった身体症状,うつや不安,幻視以外の幻覚や妄想といった多彩な精神症状がある。指標的バイオマーカーとして,ドパミントランスポーターシンチグラフィーやMIBG心筋シンチグラフィーでの取り込み低下,睡眠ポリグラフ検査での筋緊張低下を伴わないレム睡眠が挙げられる。支持的バイオマーカーとして,CTやMRIでは内側側頭葉が比較的保たれること,SPECTやPETでの後頭葉の血流・糖代謝低下,脳波における後頭葉の著明な徐波活動がある。これらからprobable/possible DLBに該当するかを判断するが,鑑別診断にはADが最も重要である。なお,わが国では認知症を対象とした糖代謝PET検査は保険適用外である。
DLBは対症療法が基本である。症状が多彩で,1つの症状に対する治療が他の症状に悪影響を及ぼしうるため,対応すべき症状に優先順位をつけて治療計画をたてる。非薬物治療を優先し,改善しない場合に薬物治療を考慮するが,DLB患者は高齢であり,薬物の有害事象が生じやすいため,少量より漸増する。また,認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)の治療では,抗精神病薬に対する過敏性がみられるため定型抗精神病薬は禁忌であるが,非定型抗精神病薬を用いる場合においても十分に注意する(保険適用外)。
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