社会保障審議会医療保険部会は9月16日に開かれ、医療保険制度改革に関する本格的な議論に入った。後期高齢者の窓口負担引き上げや、紹介状なしでの大病院受診時定額負担の義務化対象拡大などの改革メニューについて、政府の全世代型社会保障検討会議の状況も横にらみしながら検討を重ね、年末の意見取りまとめを目指す。
部会では今後、▶後期高齢者の窓口負担割合の在り方、▶大病院への患者集中を防ぎ、かかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大、▶予防・健康づくり、▶負担への金融資産等の保有状況の反映の在り方、▶薬剤自己負担の引き上げ、▶医療費について保険給付率と患者負担率のバランス等の定期的な見える化、▶現役並み所得の判断基準の見直し、▶今後の医薬品等の費用対効果評価の活用―などを議論する。
この日は検討項目全般について議論し、医療機関関係者からは大病院受診時定額負担の拡大に改めて慎重意見が出たほか、保険者からは現役世代の負担軽減に配慮した改革の実現を求める声が上がった。
松原謙二委員(日本医師会副会長)は、大病院受診時定額負担について、「費用負担を求めなくても自然に外来機能が分化する世界を作ることが本来の目標だ」と指摘。定額負担を引き上げ、増加分を公的医療保険の負担軽減に充てるという、全世代型社会保障検討会議・中間報告の提言に対して、本来の趣旨に反すると改めて否定的見解を示した。池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)も、「医療提供体制には地域差がある。公民の差、病院とかかりつけ医、外来と入院でも差があることを丁寧に議論せずに、全国一律の対応にすると医療崩壊につながる」と警鐘を鳴らした。
一方、安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、現役並み所得の判断基準の見直しについて、「現役世代の支援金負担がこれ以上増加しない仕組みにする必要がある」と強調。現行では現役並み所得者の医療給付費に公費は投入されていないが、「(一般の後期高齢者と同じ)公費50%負担としていただきたい」と要望した。
また、同日の部会には、オンラインによる被保険者資格確認の関連事項として、マイナンバーカードの健康保険証利用の進捗状況などが報告された。マイナンバーカードを保険証として利用するには、事前にカードのICチップに格納された電子証明書のシリアル番号と個人単位化された被保険者番号の紐付けを行う必要がある。具体的には、▶利用者本人がスマートフォンやパソコンを使ってマイナポータルから手続きする、▶薬局や医療機関の窓口に設置された顔認証付きカードリーダーで手続きする(21年3月から)―の2つの方法があり、厚労省は、今後、ポスターやリーフレットなどを活用して広く国民に周知していく考えを明らかにした。