No.5033 (2020年10月10日発行) P.64
岩中 督 (外科系学会社会保険委員会連合会長、埼玉県病院事業管理者)
登録日: 2020-09-25
最終更新日: 2020-09-25
現行の診療報酬では、「手術通則14 同一手術野において、2以上の手術を同時に行った場合の費用の算定は、主たる手術の所定点数のみにより算定する」とある。併施する従たる手術も100%の報酬が得られる例外的な術式は、植皮術、一部の組織移植術や大腿骨骨切り術などわずか14術式に限られる。一方、これではあまりにもひどい、と行政が思ったからか、従たる手術の報酬を50%に限り認める「告示 複数手術に係る特例」があり、112術式が掲げられている。これら手術が特例になった理由は定かではないが、たとえば「K655胃切除術」に「K672胆嚢摘出術」を併施すると診療報酬の低い胆嚢摘出術の50%が加算できることになる。胃癌と胆石症が重なることは決して珍しいことではなく、なぜ胆嚢摘出術が減額されるのかその理由は不明である。患者にとっては一度の手術で二つの治療が済むことで、術後の痛みは1回で合計入院期間も短くなることから、二つの手術料を満額支払い、さらに加算を払ってもよいくらいの貢献ではなかろうか。収益を上げたい医療機関であれば、二つの術式を別々の入院で行っても不思議ではない。前述の例の外保連の考え方は、それぞれの手術の報酬を100%ずつ加え、開腹の手間が1回少なくできることから、「K655胃切除術」(100%)+「K672胆嚢摘出術」(100%)−「K636試験開腹術」が適切ではないか、と考えるが賢明な読者諸兄はどのようにお考えだろうか。
また、肝転移の複数個の部分切除は、何個腫瘍を切除しても同一点数であったが、今改定でようやく「K695 1ロ 複数回の切除を要するもの」が認められた。ただし、3個以上の切除は同点数である。また両側の鼠径ヘルニア手術は、従前のオープン法であれば2カ所の皮切のため、片側手術×2であるが、腹腔鏡で行うと片側でも両側でも同点数である。
手術診療報酬は、このようにまだまだ不条理な法則がまかり通っていることから、外保連手術試案のコーディングSTEM7に則って科学的に整理される必要があるものと考える。次稿では、外保連実務委員会活動、特に厚生労働省とのヒアリングについて述べる。
岩中 督(外科系学会社会保険委員会連合会長、埼玉県病院事業管理者)[外保連]