中央社会保険医療協議会総会は10月28日、入院医療における2020年度診療報酬改定の影響を検証する今年度調査の調査票案を了承した。今回の調査では、新型コロナウイルス感染症の対応に関する調査項目を新設したほか、DPCデータを提出すれば調査票の記入を省略できる範囲を拡大した。調査結果(速報)の報告は来年1月以降の予定。
今年度に実施されるのは、▶一般病棟入院基本料等における「重症度、医療・看護必要度」の施設基準等の見直しの影響について(その1)、▶地域包括ケア病棟入院料及び回復期リハビリテーション病棟入院料の実績要件等の見直しの影響について(その1)、▶療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しの影響について(その1)、▶医療資源の少ない地域における保険医療機関の実態について―の4調査。いずれの調査においても、施設や患者に関する基本情報の項目などに、今回の新型コロナウイルスの感染拡大への対応に関する設問が追加された。
また、回答する医療機関の負担を軽減する観点から、DPCデータの提出で記入を省略できる範囲を拡大。調査時に提出したDPCデータに、▶様式3(入院基本料の届出状況などの施設情報)が含まれる場合は施設調査票の一部項目の記載が不要、▶様式1(患者属性や病態などの情報)が含まれる場合は、退棟患者票の一部項目の記載が不要―などとする。
同日の総会では、医薬品・医療機器の費用対効果評価の活用についても議論した。同制度は19年4月に運用を開始。医薬品の場合は、ピーク時の市場規模予測が一定規模以上の新規収載品などを対象に選定し、既存の比較対照品目に比べて、費用や効果がどの程度増加するかを分析する。結果の取り扱いに関しては、▶保険収載の可否の判断には用いず、保険収載後の価格調整に用いる、▶価格調整の対象範囲は有用性系加算部分(原価計算方式で薬価算定された品目で、製品総原価の開示度が50%未満の品目は営業利益部分も対象)とするルールが設定されている。
厚生労働省によると、10月1日時点で医薬品については12品目が費用対効果評価の対象品目に選定され、このうち複数の品目が企業および国立保健医療科学院などによる公的分析を間もなく終え、年度内には中医協総会で、総合的評価についての審議が行われる見通しだという。
同制度について、経済財政諮問会議は「新経済・財政再生計画 改革工程表2019」の中で、保険収載の判断に活用することなどの検討を求めているが、同日の総会の審議では、現時点での議論は時期尚早との認識で委員の意見が一致した。
診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「昨年から制度の運用が開始されたところであり、影響の検証や課題の検出を引き続き行っていくべきだ」と表明。支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)も、「将来的には保険償還の可否に用いることも視野に入れて検討する必要があるが、まずは国内事例の集積や検証を、スピード感を持ってやっていくべきだ」と述べた。