去る1月10日、十日戎の日に、西宮神社からほど近い西宮市民会館で“2016まじくる・かいご楽快”が開催され、全国から約700人が集った。西宮市のNPO法人つどい場さくらちゃんは、10年前から毎年「かいご学会」を開催してきた。認知症の介護者が学び、支え合い、成長する場だ。
“かいご”とわざわざ平仮名になっているのは、「か=介護」「い=医療」「ご=ご近所さん」が三位一体となり協働することを目指しているからだ。また今年から学会ではなく“楽快(がっかい)”と改名した。「介護を楽しみ介護者も気持ちが良くなることが大切」と丸尾多重子代表が理由を語った。
そしておなじみの“まじくる”とは“ごちゃ混ぜになる”という意味の造語だ。今後人口減少・多死社会が進む中、地域における既存のヒエラルキーは崩壊していく。一方、医療、介護、福祉、そして市民、行政が立場の違いを乗り越えてフラットな立場になり自由に意見交換しながら認知症の人を地域で支える仕組み作りが求められている。実はこれはとりも直さず、国が推し進めている「地域包括ケア」の理念そのものであろう。
この集会には役人や学者などの「偉い人」はいない。集うのは現場の多職種と介護家族と市民たちである。全国から心ある医師たちも一市民として来てくれて嬉しかった。“かいご楽快”はいわば、学会や研究会の裏番組である。認知症医療や介護保険制度へのアンチテーゼともいえる大集会だ。表番組はどうしても現実離れした理想論に偏ることがあるが、ここでは現場の本音がさらけ出されて聴衆の強い共感を得ていた。
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