編: | 長尾 和宏(長尾クリニック院長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 168頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2020年04月25日 |
ISBN: | 978-4-7849-6667-7 |
付録: | 無料の電子版(HTML版)が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
◆団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて構築が進められる「地域包括ケアシステム」。今後、現場の医師に求められる役割も大きく変化していきます。
◆本書を構成する60のクエスチョンは、地域包括ケアを実践する上で起こりうるリアルなトラブルや誰もが迷う素朴な疑問ばかり。それに対して、既に現場で地域包括ケアに携わっている様々な職種のエキスパートが、独自の考えを交えながら丁寧に解説します。
◆高齢者に関わる問題のみならず、小児や難病患者の地域包括ケア、他職種との連携の実際や効率的な会議の実践例などを幅広く紹介。
◆きれいごとばかりを並べた一般論ではない、生々しい主張とリアルな知見に基づいた地域包括ケアの実践書です!
本書は、Webコンテンツ(PDF版+HTML版)としても別途ご購入いただけます
第1章 地域包括ケアを知る
1 なぜ地域包括ケアなのか―2040年問題とは85歳以上問題
2 地域包括ケアとは何か
3 地域包括ケアシステムがめざすもの
4 かかりつけ医と地域包括ケア
第2章 地域包括ケアシステムに関する60のQuestions
A 認知症の人と地域包括ケア
1 家族から「入院させたい」「施設に入れたい」と言われたときどうするか?
2 認知症の人の急性疾患への対応をどうするか?
3 外来に来たがらない認知症の人をどうするか?
4 認知症の人の社会参加の場ってあるの?
B 非がん疾患と地域包括ケア
1 非がん疾患の意思決定支援はどうすべき?
2 誤嚥しない、させないケアとは?
3 医師ができるポリファーマシー対策って?
4 「老衰」と死亡診断するのに迷う?
C 小児の地域包括ケア
1 小児の地域包括ケアの対象となるのはどのような子どもですか?
2 小児の地域包括ケアに関わる地域の専門職はどのようなメンバーですか?
3 小児の地域包括ケアが成人と異なるのはどのような点ですか?
4 教育との連携はどのようなものですか?
D 神経難病と地域包括ケア
1 神経難病!苦手と思うのはなぜ?
2 必ず遭遇する<結構多い>神経難病は?
3 「生きるか逝くか」重い意思決定に気が重い?
4 神経難病、地域で支えるってどういうこと?
E 独居高齢者の地域包括ケア
1 独居で死ぬと孤独死なの?
2 独居でも安心なTHP地域包括システムって何?
3 ICTを使うと独居でも安心なの?
4 独居でのACPはどうするの?
F 病院、地域連携室と地域包括ケア
1 地域連携室ってどんなことをしているの?
2 入院した患者をスムーズに在宅へ移行するにはどうすればよい?
3 医師がケア移行期(療養環境が変わるとき)に提供すべき情報は?
4 かかりつけ医機能として“在宅療養”の安定をめざすには?
G プライマリケア医と地域包括ケア
1 「地域包括ケア」でのプライマリ・ケア医の役割は?
2 個別ケアに関する地域包括ケア会議って何?
―どのようなケースを提案すればよいの?
3 地域課題に関する地域包括ケア会議って何?
―解決すべき地域の課題とは?
4 「地域包括ケア」は医療計画や介護保険計画などの医療政策とどう関係するの?
H 薬剤師と地域包括ケア
1 在宅医療での薬剤師の仕事は、配達と整理ではないの?
2 医師は訪問していないのに、薬剤師が訪問する意味はあるの?
3 薬剤師が在宅でバイタルを測るのは違法ではないの?
4 薬剤師と連携したい場合、どうすればよい?
I 訪問歯科と地域包括ケア
1 訪問歯科診療って何をしているの?何ができるの?
2 訪問歯科と多職種の上手な連携の仕方は?
―歯科が考えるべきこと、多職種に知ってもらいたいこと 3 なんで「摂食・嚥下」って言うんだろう?―咀嚼機能のリハビリテーションを忘れない
4 終末期に歯科は何ができるの?―終末期の口腔管理とは?
J ケアマネと地域包括ケア
1 「地域包括支援センター」の役割は何?どこが運営している?
2 「認知症初期集中支援チーム」って何?どんな役割がある?
3 「お泊りデイサービス」って何?普通のデイサービスとどう違う?
4 「介護支援専門員」は誰がどうやってなる?「主任介護支援専門員」との違いは何?
K 行政と地域包括ケア
1 介護保険制度とは?―基本的な考え方とサービス利用の流れ、地域包括ケアシステムの進化・推進
2 介護保険を取り巻く状況はどうなっている?―高齢化や財政面の課題について
3 地域包括ケア「見える化」システムとは?
4 医療・介護連携はなぜ重要か?―連携を図る取り組みのこれまでとこれから
L 多職種連携、街づくりのヒント
1 在宅における多職種連携って?
2 外部の連携先に対する教育って?
3 在宅医療があたりまえになる社会って?
4 自分らしい人生会議って?
M 各地域での実践例
1 「地域包括ケアシステム」「地域包括支援センター」「地域包括ケア病棟」など…同じような名称が多い中、医師はどこと何をすればよいの?
2 地域包括ケア関連会議への招聘が多くて困っている…医師が参加すべき会議の見きわめ方は?
3 主治医/副主治医のような、複数の医師が関わる仕組みづくりのヒントとは?
4 いろいろな立場の人が使える情報共有のためのICTの仕様とは?
N 地域緩和ケアという視点
1 地域緩和ケアとは?
2 地域緩和ケアと地域包括ケアシステムの接点(関係性)とは?
3 地域緩和ケアの普及を妨げるものは何か?
4 看取りを念頭に置いた在宅医療の実践に向けて必要なことは何か?
O 推進のためのポイント
1 地域包括ケア推進を「困った」「難しい」で終わらせないために
―様々なファシリテーションスキルを使ってアイデアを活性化しよう
2 医療・介護のフラットな連携が地域でなかなか育たない…
―フラットな関係性を育てる「ワールドカフェ」の導入を
3 課題があるのはわかっているけど、なかなかアイデアが湧かない…
―1つの課題を掘り下げるファシリテーション・スキル、オープン・スペース・テクノロジーとは?
4 多職種研修会・在宅医療推進協議会の進め方
―ファシリテーターとしてのリーダーが関わる東京都大田区大森地区の場合
巻頭言─地域包括ケアってなんだ? 医師の役割とは?
・地域包括ケアって「ケア」でしょう?
・在宅医療はやってないから関係ないよ。
・私は病院勤務医だから関係ないわ。
・看取りには関わりたくない。
・国が決めた机上の空論じゃない?
そんな声をよく聞く。多くの医師の本音かもしれない。
しかしこうした認識は間違っている、と断言する。
2040年まであと20年間、私たちは人類史上誰も経験したことがない勾配で超々高齢・多死社会の進行に対峙する。今こそ医師はこの津波を乗り切るためにリーダーシップを発揮すべきである。では私たちは何から始めたらよいのか。各領域の専門家がそれぞれの角度から「地域包括ケア」を解説したのが本書である。地域包括ケアの教科書はたくさんあるが、「医師の役割」に特化した実践書はきわめて少ない。本書はQ&A形式で、地域包括ケアの入門から到達点まで網羅している。最近の話題である「人生会議」についても医師向けに解説されている。
2020年3月11日、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルス感染症のパンデミック宣言をした。一部の地域では既に医療崩壊が起きている。高齢者がハイリスクであるので、在宅や施設における発熱者の取り扱いが喫急の課題となっている。PCR検査をするのか、救急搬送するのか、呼吸器をつけるのか。「緊急人生会議」の必要性が高まっている。市中感染になれば市町村医師会長と首長の連携、すなわち「地域ケア会議」で対応することになる。ローカルルールでしか対応できないので感染症対策も地域包括ケアである。さらに、地震や津波などの激甚災害後の慢性期医療は地域包括ケアで対応するしかない。
本書が診療科を問わず多くの医師に読まれ、多職種にもわかりやすく伝わることを期待してい る。また最後に、ご執筆頂いた先生方に心から御礼を申し上げる。
2020年4月 長尾クリニック院長
長尾和宏