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【識者の眼】「知の情報拠点である図書館との連携を通した人生会議の啓発活動」岡江晃児

No.5057 (2021年03月27日発行) P.62

岡江晃児 (杵築市医療介護連携課兼杵築市立山香病院・ソーシャルワーカー)

登録日: 2021-03-12

最終更新日: 2021-03-12

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私がソーシャルワークしている大分県杵築市では、終活を通して「死生」「人生会議」について考える文化を構築するために、高齢者だけでなく様々な世代の人へアプローチする事業を展開している。その一つとして、「図書館」との連携がある。わが国において図書館は、1949年に制定された社会教育法により、公民館や博物館と同じく社会教育のための機関とされている。同法に基づき地方公共団体が設置するのが公立図書館である。社会教育施設としての公立図書館は、地域をめぐる情勢変化とともに担うべき役割と内容が変化してきており、地域の自立的な発展を目指していく上で、地域における知の情報拠点としての図書館、特に公立図書館の果たす役割が重要となってきている。

杵築市では新築移転を機に来館者が増加している市立図書館からの要望として、専門的な分野「医療」「健康」に関する情報を発信したいという声が上がった。そこで、多世代が集まる図書館という場を通して医療・介護・保健の情報を啓発していくことを目的として、杵築市医療介護連携課のソーシャルワーカーと市立図書館の司書が、専門職としての相互の強みを活かし、医療介護連携課と図書館とのコラボレーション企画を2018年11月から2年間実施した。その第1回目のテーマを「しあわせな生き方とは」とし、「死生」「終活」等に関する本を約100冊、特設コーナーとして設置した。多世代が集まる特性を活かし、大人が読む本だけでなく、子どもが読める絵本も置いた。コラボレーション企画の中で、2019年9〜10月の期間に1回も貸し出されていない本を特別コーナーに設置したところ、約75%が貸し出される結果となった。図書館や本を通して子どもから大人まで様々な世代の人が「死生」「人生会議」等に関して考える機会に繋がっている。

また2021年3月から図書館にて、地元の杵築高校の美術部と書道部がコラボレーションして「終活」「人生会議」に関するアート展示を開催する。今後も多世代が集まる地域の知の拠点の一つである図書館と連携を行い、多種多様な事業の発信の場として発展していきたい。

【参考文献】

▶小磯修二, 他:年報 公共政策学. 2019;13:23-45.

岡江晃児(杵築市医療介護連携課兼杵築市立山香病院・ソーシャルワーカー)[図書館][終活][ACP

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