No.5065 (2021年05月22日発行) P.59
渡辺晋一 (帝京大学名誉教授)
登録日: 2021-04-28
最終更新日: 2021-04-28
多くの日本人は日本の医療は一流だと思っているが、既に本欄で述べたように、日本は東南アジア諸国より劣っている。何しろ厚生労働省や日本の医学専門家は、証拠に基づいた医療(EBM)ではなく、日本独自の医療を行うからである。感染症対策も同様である。
1)PCR検査の抑制:感染対策の基本は①感染者の発見、②隔離、③治療である。しかし日本では感染者の発見に必要なPCR検査を絞り、①②を行ってこなかった。そのため③ができず、関西では医療が崩壊している。今でも政府の専門家会議では積極的なPCR検査に反対する人がいるが、海外では1年前から積極的にPCR検査を行い、国際的なスポーツ大会では、毎日のPCR検査が必須になっている。
2)人流の抑制:感染が拡大するかは人流を見れば予測できるが、政府は感染者の実数を見ないと不明だとして、感染対策を遅らせる。テレビで路上飲みの人を見ると、感染者が減る可能性は少ないようである。
3)根拠が乏しい中途半端な感染対策:新型コロナ感染症は主に飛沫感染でうつるため、飲食店の感染対策が肝である。しかし政府の感染対策は、飲食店の時短営業とマスク会食で、会食してもよいという。食事は一人で黙って行い、会話は屋外できちんとマスクをつけ、距離をとってするのが世界標準である。実際に海外では、店内の飲食は禁止している。
4)Go Toという感染拡大キャンペーン:人が移動するだけでは感染は拡大しないと言うが、旅行してホテルに閉じこもり出歩かない人はいない。またナチスドイツが国威高揚と軍事目的で始めたといわれる聖火リレーを開始した。
5)経済のためと言い訳:感染を抑えなければ経済にも深刻な影響を与える。来年は海外の多くの国で経済の回復が見込まれるが、日本の回復は遅いと予測されている。経済を回すためにも職場等での定期的なPCR検査が必要である。
6)ワクチン接種:ワクチン接種は、医療従事者でもまだ20%しか終わっていない。菅総理はファイザーのCEOに電話したというが、面会もせず、正式な契約を交わしていないという。
7)不十分な検疫:日本は島国で、検疫さえきちんとすれば、新型コロナを防げたはずである。実際、台湾やニュージーランド、オーストラリアでは、市中感染者はほとんどいない。
字数制限のため次号に続く。
渡辺晋一(帝京大学名誉教授)[新型コロナウイルス感染症]