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【識者の眼】「コロナ患者に対する大阪の地域医療の現状と全国の医師への提言」池尻真康

No.5065 (2021年05月22日発行) P.56

池尻真康 (いけじり内科外科クリニック院長)

登録日: 2021-05-10

最終更新日: 2021-05-10

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5月5日時点で、大阪の重症者数446人に対し確保重症病床は361床です。大阪では医療崩壊が続いています。コロナ病床満床⇒在宅待機患者増、容体悪化⇒救急不搬送⇒医療とアクセスできないままの在宅死⇒検死や行政解剖、に到るのは臨床医として断腸の思いです。

一般にコロナ検査陽性後、判定医がHER-SYSに速やかに入力します。しかし今の大阪では保健所が陽性患者を把握して最初の電話まで3〜5日、在宅かホテル収容か入院になるまでさらに5〜7日かかっています。この発症直後から7〜10日間が医療の管理下に入っていない危険な期間です。

大型連休前、地区医師会として小さな試みをいたしました。区役所保健センターを訪れ、保健課長、主任保健師と在宅待機患者の概数(100人超)や指先モニターの配布・備蓄状況(残りあと数個)などを情報交換しました。また医師会在宅医療当番の携帯番号を保健師にお伝えし、日頃から24時間オンコールで対応できる旨、お伝えしておきました。

連休中に40代男性から、高熱、咳、頭痛が続くが薬もないとの相談がありました。電話対応と必要薬を配達しましたが同夜、酸素化が増悪し保健所指示で救急搬送要請をしたものの、救急隊から「80%台でも入院順番待ち」と説明を受け不搬送となりました。翌朝、患家より40度の発熱と連絡が入り、地域の基幹病院に相談、ステロイド剤の適応を再確認した上で処方しました。ステロイド内服後、解熱し酸素化も改善しHOT導入は見送りました。

これから第4波のピークを迎えられる各地の先生方は是非、地区医師会の在宅医療資源と最前線で経過観察をしている保健所保健師との連携体制を構築しておいてください。特に濃厚接触等の行政検査で陽性診断された方の多くは「かかりつけ医」を持たないので連絡待ちとなり、医療の目が届いていません。自院で発熱外来を行っている先生方におかれましては、陽性患者のHER-SYS入力後も「かかりつけ患者」として、電話診療や処方薬の配達を薬剤師会と申し合わせてください。また入院待ちの1週間超を逆手にとって、かかりつけ患者として電話ACP(リモート人生会議)をお勧めします。保健所から患者への初めての電話で「人工呼吸器まで希望しますか?しませんか?」と聞くのは、コロナ診断直後の心身ともに不安定な患者、特に高齢者には酷です。このとき「かかりつけ医はいますか? いない方は近隣の先生を紹介します」との保健師からの一言で、救える命があると思います。

池尻真康(いけじり内科外科クリニック院長)[新型コロナウイルス感染症]

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