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【識者の眼】「ICTを用いた『第4の医療』へ」土屋淳郎

No.5065 (2021年05月22日発行) P.63

土屋淳郎 (医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)

登録日: 2021-05-12

最終更新日: 2021-05-12

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ICTを利用して得られたデータは、「ためる」「つなげる」「活用する」ことが重要であると考える。データを「ためる」には電子カルテや検査サーバー/ビューワーなどのシステムが利用され、ためられたデータは閲覧や検索がしやすくなっている。病院の検査データなどに始まり、今や診療所でも電子カルテ等を利用してデータをためることは当たり前になっている。

ためたデータとデータを「つなげる」場合には標準化が必要である。東京総合医療ネットワークでは異なるメーカーの地域医療連携システムに格納されたSS-MIX2形式のデータを相互閲覧することができるようになったが、電子カルテデータの標準化などはまだまだ前途多難である。また、施設間の情報共有も「つなげる」ことと考えられ、地域医療連携システムは病院と診療所を、多職種連携システムは医療と介護をつなげている。さらに近年ではPHR(personal health record)やWEB問診など患者と医療機関を「つなげる」システムの利用も増え、昨今注目されているオンライン診療もその一つと言えるだろう。そして今後はこれらのデータを「活用する」ためにデータマイニングやAIの出番になるのではないだろうか。

これら医療データの取り扱いの変遷は、診療形態の変化とも関連していると考えている。まず第1の医療と言われる外来/通院医療は患者が医療機関に出向いて受ける医療であり、第2の医療と言われる入院医療はそれが連続して行われるものである。いずれも医療データは医療を行う医療機関内にためておけばよかった。しかし第3の医療と言われる在宅医療では医師が患者宅に出向いて行う医療となり、さらに病院や介護事業所との情報共有も必要であるため、医療データを医療機関の外に出さなくてはいけなくなり、様々な情報共有システムが利用されるようになった。東日本大震災による院内データの流失が医療データのクラウド保管を進めたという側面も影響しているだろう。

そして今、医師も患者もそれぞれの場所にいながら医療を行う「第4の医療」の時代が来つつある。これはパソコンや通信網の進歩に加えて感染症対策として発展するということもあるだろう。もちろんその中心はオンライン診療となるが、単に対面診療を置き換えただけのものではなく、多職種連携システム、WEB問診システム、PHR、AIなどのシステムが連動して行われる新たな価値を持った診療形態へと発展していくのではないだろうか。

土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[新たな診療形態]

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