外来医療の機能の明確化と連携や、医師の働き方改革などの関係施策が盛り込まれた「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」(以下、改正医療法)が5月21日、参議院本会議で可決・成立した。
改正医療法は、①地域の実情に応じた医療提供体制の確保、②医師の働き方改革、③各医療関係職種の専門性の活用―などが柱。このうち①では、外来医療における機能の明確化と連携を図るため、「外来機能報告制度」を創設する。入院医療の「病床機能報告制度」を参考に、療養病床または一般病床を持つ病院、診療所の管理者に対して、▶「医療資源を重点的に活用する外来」(仮称)の実施状況、▶当該外来を地域で基幹的に担う意向がある場合はその旨―などの都道府県への報告を課す。無床診療所からの報告は任意とする(2022年4月1日施行)。
制度の具体的運用は今後、専門家などで組織される検討の場で議論される。特に「医療資源を重点的に活用する外来」の基準がどうなるかについては、22年度診療報酬改定のテーマの1つである大病院外来の受診時定額負担とも深い関わりがあるため、今後の動向が注目される。社会保障審議会医療保険部会は昨年12月にまとめた議論の整理で、紹介状がない患者からの定額負担徴収の義務化対象を、「医療資源を重点的に活用する外来」(部会は「紹介患者への外来を基本とする医療機関」と表現)を地域で基幹的に担う医療機関のうち、一般病床200床以上の病院に拡大する方針を打ち出している。
一方、医療計画は、新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、第8次計画(24~29年度)から「新興感染症等の感染拡大時における医療提供体制の確保」に関する記載事項を追加。現在の5疾病・5事業を5疾病・6事業に改める(24年4月1日施行)。
②の医師の働き方改革では、24年度から導入される医師の時間外労働の上限規制で、地域医療の確保や研修のために特例的に年1860時間までの休日・時間外労働を認める「地域医療確保暫定特例水準(B、連携B)」、「集中的技能向上水準(C-1、C-2)」を設ける。いずれも要件を満たす医療機関を都道府県知事が指定。これら医療機関の管理者には、「医師労働時間短縮計画」の作成や、指定対象業務に従事する医師の健康確保措置(面接指導、連続勤務時間制限、勤務間インターバルの確保など)の実施を求める(24年4月1日に向け段階的に施行)。
③では医師から医療関係職種へのタスクシフト/シェアが進むよう、救急救命士や診療放射線技師、臨床検査技師などの業務範囲を拡大する(21年10月1日施行)。医師養成課程の見直しも実施。共用試験合格(CBTとOSCE)を医師国家試験の受験資格要件とし(25年4月1日施行)、共用試験に合格した医学生が臨床実習として医業を行える旨を明確化する(23年4月1日施行)。