厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」は5月31日、およそ5カ月ぶりに初診からのオンライン診療の恒久化の議論を再開した。この日は受診歴がない患者でのオンライン初診を認める際に、どのような医学的情報があることを条件として求めるかを検討。構成員の多くが、オンライン診療全般の推進につなげるためにも、細かく規定することは避け、医師と患者の合意を前提とした現場の裁量に委ねるべきだとの意見を示した。
検討会ではこれまで、初診からのオンライン診療について、オンライン診療を行う医療機関に、▶定期的に受診している、▶過去に受診歴がある、▶過去に受診歴はないが、かかりつけ医などから情報提供を受けている―のいずれかに該当する場合に限り、認める方向で議論を重ねてきた。
この日は主に、過去に受診歴がない患者の対応を議論した。厚労省は、こうした患者でオンライン初診を認める場合の医学的情報の例として、▶過去の診療録、▶診療情報提供書、▶健康診断の結果、▶地域医療情報ネットワーク―の4項目を提示。これらに限定せず、患者の医学的情報として認められる情報について引き続き議論することや、ウェアラブル端末などのデジタルデバイスを通じて得られる情報の取り扱いについて検討する案も併せて示した。
提案を受けた議論では、オンライン初診を可能とする医学的情報のポジティブリスト化を求める意見も出たが、多くの構成員は医師と患者の裁量に委ねるべきだとの見解を表明。オンライン初診の間口を広げることが、若年世代がかかりつけ医を持つきっかけとなることに期待感を示した。
今村聡構成員(日本医師会副会長)は、「ルールを決めて取り扱える、扱えないとするのではなく、限られた中でたくさんの情報を集めることが鍵になる。それを診療の参考にできるかどうかはオンライン診療を行う医師が判断すればいいのではないか」と指摘。大石佳能子構成員(メディヴァ代表取締役社長)も、「細かく規定するよりも、患者と医師のリテラシーを信用して両方に裁量権を与え、どの場面でどの情報があればいいかは、その場面で合意していけばいいのではないか」と同調した。
検討会は6月中に初診からのオンライン診療の恒久化に関する基本的な考え方をまとめる予定で、次回はこれまでの論点を整理した骨子案が提示される見通し。
一方、同日の検討会には、新型コロナウイルス対応の特例として実施されている電話診療・オンライン診療について、2021年1~3月の実績を検証した結果も報告された。過去の報告同様、物理的に大きく離れた地域の患者を診療したケースや、麻薬・向精神薬などの禁止薬剤を処方したケースが一部認められたことから、厚労省は要件を守らない事例に対して引き続き厳正に対処する方針を示している。